多嚢胞性卵巣症候群と不妊と漢方.jpg多のう胞性卵巣症候群(PCOS)は超音波で卵巣内に多数の卵胞のう胞が認められることを言います。多のう胞性卵巣症候群があると
1)月経異常(無排卵月経や月経の遅れなど)
2)LH(黄体化ホルモン)値の上昇とFSH(卵胞刺激ホルモン)の低下
などが認められます。結果的に排卵しにくくなり、タイミングもつかみづらく、ゆえに不妊の原因になるとされます。
しかし多のう胞性卵巣症候群であれば、絶対に妊娠しないという訳ではありません。女性の7%程度に見られる病気とも言われています。よって、多のう胞性卵巣症候群と診断された場合においても、あまりに悲観せずに前向きに治療に取り組んでいきましょう。
多のう胞性卵巣症候群は、卵胞が多数発達するにも関わらず、排卵が起こりにくい状態です。よって西洋医学では排卵の誘発を目指すことになりますが、過度に多数の卵胞を刺激すると卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症しやすくなりますので注意が必要です。
クロミッドなどの一般の排卵誘発剤は反応しにくいため、FSH製剤を使う場合が多いのですが、ほぼ毎日の厳密な検査、管理が必要となり、患者さんにとっては負担となります。
なお最近では糖尿病薬(グリコランなど)が効果があるとされ使われることが増えているようです。
とはいえ、西洋医学では原因も分かっていない疾患であり、対処法も確立されている訳ではありません。排卵誘発で体に過度の負担をかけるよりも、漢方的な治療を検討しても良いのではないでしょうか。
漢方の考え方で多のう胞性卵巣症候群を見た場合、もっとも注意すべきは「気=エネルギー」の巡りであると考えられます。もともと下垂体ホルモンの分泌異常から引き起こされる疾患であり、各種ストレスが病気に関わっている可能性が考えられます。よって、ストレスにより「気」の巡りが悪くなり、排卵障害が起こっていると推測します。具体的には「逍遥丸(しょうようがん)」や「水快宝(すいかいほう)」といった漢方を検討します。なお「気」の巡りが悪くなると「お血」も発生しますので、その点も考慮します。
また卵巣に固い膜が出来て排卵しにくくなっている状況から考えて、その固い膜を構成している物質「痰湿=不要な水分」を取り除くことが必要と考えられるケースもあるでしょう。その場合は「温胆湯(うんたんとう)」などの漢方が候補に挙がります。
なお「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」というお薬が多のう胞性卵巣症候群に使用されるケースがあります。これは男性ホルモンが多のう胞性卵巣症候群に関与しているとされるためで、「芍薬甘草湯」はその男性ホルモンを減らす効果があると言われています。
ただしこれらの使い方は「多のう胞性卵巣症候群」という病名から考えた対処法であり、実際には体質を加味し総合的に判断します。