不妊とAMH 卵巣の若返り.jpg最近、病院の検査で行うことが多くなってきたAMH(抗ミューラー管ホルモン)。卵巣予備能を測定する検査と言われています。今まではFSHを指標として、卵巣機能がどれだけ若いかを推測してきました。いわば卵子の質を数字で見ようとしているのです。しかしFSHは周期に依っても変動が激しく、またFSHが高くとも質の良い卵子が採卵されることも多いとされ、明確な指標にはなりにくかったのです。
生理3日目で測定されるFSHは4~7mIU/mlが正常値とされることが多いのですが、ホルモン剤を服用すると変化しますし、15mIU/ml程度でも問題なく妊娠しているケースもあるため、FSHの数値を参考程度にしている病院も多いようです。
そのためAMHが特に欧米では重要視されているようです。AMHは発育卵胞から分泌されるホルモンです。発育卵胞とは、女性が生まれつき持っている原始卵胞から少しだけ成熟した卵胞のことです。この発育卵胞が少ないということは、今後排卵される卵子も少ない、又は質が良くないと推定されるのです。
しかしAMHの数値は科学的にどこまでが良い悪いとも決まっていません。それどころか測定法の標準化がなされていないため、病院ごとに基準値も異なっています。よって現状では他のデータと合わせて検討し、体外受精の際の排卵誘発法を決定する時などに使用されています。また、あまりにもAMHが高い場合には、多嚢胞性卵巣症候群や、不妊治療で卵巣に過度の刺激が加わっている可能性があり、注意が必要となります。
「卵巣年齢」を測定できるとされるAMHの検査は、確かに参考にはなると思われます。しかしながら、AMHがゼロに近い方でも採卵できるケースも報告されており、学会や論文でもAMHを指標にすることに疑問が投げかけられています。それよりもやはり年齢が一番簡単で、重要な”数値”のような気がします。
さて、このAMHが低い方は、漢方的にはどのように対処をすべきでしょうか。科学的な観点から考えれば、卵巣の”老化”が進んでしまったと捉えられることから、いわゆる卵子の質を高めるための漢方を服用すると良いと考えられます。
具体的には、生命力や生殖力と関係する「腎」を補うことを重点的に考えます。「腎」を補うことは”若返り”につながると、漢方では考えられています。もちろん”若返り”は簡単ではありませんが、少なくとも現状維持を目指して漢方薬の服用を検討されると良いのではないでしょうか。
「腎」を補うことの出来る漢方薬は多種あり、代表的なものとしては「六味地黄丸」「オリジン(プラセンタ)」「海馬補腎丸」などが挙げられます。しかしこれらのお薬を手当たり次第服用すべきでは無く、体質に合わせて飲まないと効果はありません。
また「腎」を強化するためには、不規則な生活を避け、無理はせず、睡眠を十分に取ることが何より大切です。「腎」は年齢と共にどうしても衰えてしまいますが、体に無理をかけると、著しく消耗してしまうのです。
そして「腎」に良いとされる黒い食べ物を積極的に摂りましょう。黒ゴマ、黒キクラゲ、海藻類、貝類などが一般的に良いとされます。
いずれにせよ検査数値に捉われ過ぎる必要はありません。「自分は若い」と意識していれば、体も卵巣も若く保てるものです。プラス思考で、元気な赤ちゃんを授かりましょうね!
参考資料;不妊治療ハンドブック(2009、特集39号)