円形脱毛症と漢方.jpg円形脱毛症は自己免疫疾患、すなわち自分の体の組織(この場合は毛の成長維持に関する細胞)を攻撃してしまうことに依り起こると考えられています。しかし、なぜそのような状態になってしまうのか原因が詳しくは分かっていません。程度にも依りますが、自然に治るケースもあれば、完全に毛髪が無くなってしまう場合などは難治性の疾患とされます。
円形脱毛症は老若男女問わず、非常に美容面で問題のある疾患です。目立つような状態となればかつらが必要となりますが、周りに黙っていることへの抵抗感などもあり、とても大きな心へのダメージにつながるでしょう。また、子供に起こることもあり、友達から容赦のない言葉を浴びせられてショックを受ける子も多いようです。
命にかかわる問題ではないためか、医学的にもあまり研究が進んでいないようです。免疫反応を抑えるためにステロイド剤を塗布したり、注射したりする方法が唯一効果がある方法と認められていますが、効果があまり見られない例も多いようです。また、その他にも病院に依っては様々な対処方法が行われているようですが、これをすれば必ず治るという方法は存在せず、どれも決め手に欠けるというところが現状です。
漢方で円形脱毛症に対処する場合であっても、時間がかかることが多いのですが、服用後1カ月も経たずに髪が生えてきた例なども報告されています。理論に沿って漢方を服用していけば、光明は必ず見えてくるでしょう。
中医学で円形脱毛症と同じような症状を表す言葉として「鬼舐頭(きしとう)」があります。鬼が舐めたように髪の毛の一部が抜け落ちてしまう状態を指します。
そして、その原因は「風邪(ふうじゃ)」の存在を前提とし、「陰血」などの「虚」すなわち不足があると脱毛が起こると考えます。「陰血」とは体の潤いや血液成分のことです。よって「風邪」を退散させて、「陰血」を補っていけば、症状も改善していくとされます。
具体的には「当帰飲子(とうきいんし)」や「柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)」などの漢方薬の使用を考えることが多いでしょう。
また医学的にもストレスとの関係があるとされます。こちらに関しては中医学で言う「肝」の問題とされ「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」など、「肝」の流れを改善して、体をリラックスさせる処方候補になると思います。
さらには脱毛には「腎」も関係すると考えます。「腎」は生命力と関連した臓器であり、「腎」の機能低下は脱毛を引き起こすとされます。老化に伴う脱毛であれば、この「腎」のケアを中心に考えるのですが、円形脱毛症の場合にはあくまで補助的な観点から取り入れても良いでしょう。この場合には「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」や「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」を体質に合わせて選択します。
円形脱毛症は再発しやすい疾患でもあります。一時的に良くなったからと言って薬の服用を止めてしまうと良くありません。1年程度の長い目で見て対策を考えていきましょう。
そして「血」を増やす鶏肉やひじき、ほうれん草などをしっかりと食べて、アイスクリームや脂の多いもの、スナック菓子やチョコレートなどは摂り過ぎないように気を付けてみて下さい。生活習慣を改めないと再発の可能性は高くなってしまいますよ。