泣き入りひきつけと漢方.jpg泣き入りひきつけとは、憤怒けいれんとも呼ばれ、乳幼児が号泣した後に意識が消失したりチアノーゼ症状(唇や皮膚が青紫色になる)を起こす疾患です。子供の5%に起こるとされますのでそれほど珍しい症状ではありませんが、突如子供が意識がなくなったり、顔が紫になって硬直すればびっくりしてしまう方が大半でしょう。しかし普通は1分以内に収まります。
泣き入りひきつけは、発症したとしてもその後に悪影響を及ぼすことはありません。よって発作時は冷静に対応することが重要です。4-7歳になると自然に消失するとされますので、子供の成長を見守ることも大事でしょう。
とはいえ、泣き入りひきつけを起こす子供のお母さんは「私が泣かせすぎたから…」とか「何か脳に異常があるのでは」と考え過ぎてしまう傾向があります。お母さんが頑張り過ぎて心や体に余裕が無いと、赤ちゃんにも伝わって、泣き入りひきつけにつながってしまうように感じます。
私も自分の子供で経験したこともありますが、全然泣きやまない赤ちゃんや子供を前にすると、親としての無力感を覚え「なぜだろう」という不安感が生じます。しかし、それも子供の成長の一つだと受け止めて、楽しく笑顔で接することが何より大事だと思います。そして子供が2歳以上であれば、しっかりと向き合って子供が泣いていることを親身に受け止めてあげるとよいのではないでしょうか。
さて泣き入りひきつけの対処法ですが、病院ではてんかんや心疾患が否定されれば、薬での治療は行わないのが原則です。しかし頻繁に症状を起こす場合には親として心配になることは当然ですし、何かしらの対処は行うべきと思います。そのような時に漢方の服用を検討しても良いでしょう。
泣き入りひきつけは、昔からよく言われる「疳の虫(かんのむし)」のような状態から発生します。訳も分からず泣き叫ぶ症状は、漢方的には「肝」の不安定さ、すなわち流れの悪さから引き起こされていると考えられます。よって「抑肝散(よくかんさん)」などの漢方薬によって、「肝」を鎮めることによって落ち着く可能性があります。また「心」が不安定であると考えられるケースでは「甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)」や「天王補心丹(てんのうほしんたん」などを考慮しても良いでしょう。
なお、まだ薬が飲めずに母乳のみの子の場合はもちろん、もっと子供が大きい場合でもお母さんが薬を服用すると良い場合があります。先に述べたように、育児や家事で疲れて体力が消耗して、それが子供に伝わっているケースがあるためです。体質にも依りますが、「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」や「天王補心丹(てんのうほしんたん)」で体を滋養して余裕が出来ると子供も落ち着くようになることがあります。特に頑張り過ぎているお母さんは試してみてはいかがでしょうか。
参考図書;今日の治療指針(医学書院)