嘔吐下痢症と漢方.jpg冬になると感染が広がる嘔吐下痢症。原因はロタウイルスが大半を占めて、ノロウイルス、アデノウイルスが検出されることもあるようです。ウイルスと聞くと大変な病気と思いがちですが、感染力が強いとは言え、それほど怖い病原体ではありません。心配し過ぎずに、冷静に対処すれば長くても1週間で回復します。
西洋医学的にはこれらウイルスに対するワクチンは無く、治療も対症療法のみであり、ウイルスを退治するような薬はありません。時おり抗生物質を出す医師もいるようですが、これは基本的に間違いであり、胃腸症状を悪化させる危険性もあります。あまりにも脱水がひどい場合には点滴で水分を補給する必要がありますが、それ以外のケースでは安静にして少しずつ水分補給が出来れば十分です。
特に乳児が嘔吐を繰り返すと非常に心配になると思いますが、無理に嘔吐を止めてはかえって良くないとも考えられます。なぜなら嘔吐は体に入った異物を体が拒否し、排泄させようという自然反応であるからです。下痢も同様であり、無理に止めて体に残ってしまうと悪影響が出かねません。
もちろんぐったりとしたり、極端に尿量が少ないなどの脱水症状には気をつけつつ、自宅で様子を見ることが最も賢明な対処方法だと思います。
とは言え、1日でも早く回復させたいと考えるのが親心だと思います。そのような時には漢方薬を早めに服用することにより、症状の重症化を抑えることが出来ます。
嘔吐下痢症は基本的には”湿邪”が体内に侵入して起こる病気です。よって”湿”を取り除く「勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)」が第1候補のお薬となります。しかし、小さい子供の場合には「五行草(ごぎょうそう)」の方が飲みやすいかもしれません。同様に「湿」を取り除くお薬で、もちろん即効性も期待出来ます。
また嘔吐下痢症になっても症状が軽い子もいれば、重度の子もいるのが現状です。さらには保育園でほとんどの子が感染しているのにうつらない子もいます。これは胃腸機能や免疫力の差と思われます。常日頃から胃腸を労わって過ごすことが予防につながるのです。
アイスクリームやお菓子をたくさん食べていると、胃腸に負担がかかります。日頃の習慣を見直すことを第一に考え、それでも胃腸が弱く胃腸炎になりやすい子の場合には、機能を強化する漢方薬を服用しても良いでしょう。
具体的には「星火健脾散(せいかけんぴさん)」や「六君子湯(りっくんしとう)」などを胃腸の体質改善のために服用します。
嘔吐下痢症は私の子供もかかった経験があり、見ている親も辛いものです。しかし基本的に元気であれば大丈夫。子供の回復力を信じて慌てずに対処しましょう。