起立性調節障害と漢方.jpg起立性調節障害は、自律神経失調症の一種とされ、立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、吐き気、朝起きられないなどの症状が出る疾患です。規定された診断基準では、上記症状が「大症状」と定義され、「小症状」としては食欲不振、腹痛、疲労感、頭痛、乗り物酔い、顔色が悪い、なども挙げられています。もちろん上記症状は、心臓や耳などの疾患や他の要因に依っても起こる可能性があり、それが否定された場合のみ起立性調節障害と診断されます。
子供が起立性調節障害と診断されると、ご両親は最初はびっくりすると思います。確かに不登校につながることも多い病気です。しかし生活に注意して治療をしていけば、必ず改善される病気でもあります。まずは生活のリズムを大切にすることを心がけてみましょう。なお、起立性調節障害は春から夏にかけて悪化しやすいともされます。
さて起立性調節障害を漢方で捉えると、どのように判断されるでしょうか。一口に起立性調節障害と言っても、症状は様々であり、その子供に依って体質判断は異なります。ひいては服用する漢方薬も変わってきます。
しかし主には、「肝」のケアを考えると良いでしょう。
「肝」は自律神経と関係する”臓”であり、「血」を蓄えています。その「血」が不足すると、「肝」の機能が落ちてしまいます。そうなると、いわゆる自律神経失調症様の症状を引き起こすとされます。ちなみに春は「肝」の季節であり、これも先に述べた悪化しやすい時期との関連性にうなずくことが出来ます。また、この「肝血」はテレビやゲームなどで目を遣いすぎると消耗するとされます。
よって「肝」の「血」を補うとされる「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」や「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」などを服用していくと良いでしょう。そして、鶏肉やほうれん草などをしっかりと食べて、食べ物からも「血」を補充してくとさらに改善は早くなります。
また「気虚」が関連しているケースも多いと思われます。「気虚」とは「気」すなわちパワー不足であり、それが朝起きられない、疲労感などの症状に結びついていると考えます。
この場合には「気」を補う「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「小柴胡湯(しょうさいことう)」などの服用を検討しても良いのではないでしょうか。
さらには、めまいが多く、「湿気」の関与も疑われる場合には「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」などを服用することも検討されるべきでしょう。
なお、寝不足はご法度です。ご両親も大変だと思いますが、早寝早起きを実践してみて下さい。
昔も朝礼中などに倒れる子は多かったですが、今考えれば「起立性調節障害」だったのかも知れませんね。子供の成長につれて段々と収まっていくことが多い疾患ですから、あまり深刻に考え過ぎずに、子供に笑顔で接し、ストレスを与えないように気をつけましょう。
(参考図書;今日の治療指針(医学書院))