漢方的水の摂り方.jpg「水を毎日2リットル飲む」ことを勧められた、という話を時々耳にします。一種の健康法として、普段から水をたくさん飲むことを実践している方も多いかもしれません。
確かに人間の体の中には水分が60%程度あると言われていて、もっとも大事な成分であることは間違いありません。また年齢と共に段々とその量が減っていくことが分かっていますので、若さを保つためにも水は多く飲んだ方が良いと考えても不思議ではないでしょう。
しかし、一つ考えて頂きたいのが、一律2リットルなどと量を決めることは理論的ではないということです。
まず第一に体に必要とされる水分は、その人の生活様式に依って違います。たくさん運動して汗をかく人はもちろんそれに見合った量の水分摂取が必要であり、ほとんど家で過ごす人が飲むべき水分量と同じ視点で考えることは出来ません。とは言っても、室内にいることが多い人でも寝汗をかきやすい人などは、失った水分の補充が必要でしょう。
次に季節的な問題があります。夏場は汗を自然にかきますから、より多くの水分が必要であることは疑うよしもありません。
では漢方の理論で考えると、水の摂り方として大事なことはどのような点でしょうか。中医学では、体に必要な水分を「津液」と呼び、不必要な余分な水分を「痰湿」として分けて考えています。「津液不足」の場合には、水分摂取の必要がありますが、無理に摂り過ぎてしまうと体の中に溢れ、「痰湿」が生じて悪さをしてしまいます。
また体温より冷たい水は、体の熱を奪い、”気(エネルギー)”を消耗させます。そして胃腸の吸収不良につながり、「痰湿」を生じさせる原因ともなります。
結論としてまとめるならば、水分の上手な摂り方は以下のようになります。
● 水の摂り過ぎは体に悪影響を与える場合があり。喉が渇いた時に飲めば良し。
● 冷たい水分も悪影響となる可能性大。さ湯または常温で飲むこと。
● 一度に大量に摂ると吸収しきれない場合も。こまめに摂ること。
● 一日の水の必要摂取量は人それぞれ。自分の体質に合わせて目安を決めること。
例えば結石が出来やすい方や、腎臓疾患のある方、血管系の病気の場合なども水分を多めに摂ることをが望ましいケースもあります。ただし、むやみに水分を摂っても胃腸で吸収できなければ意味がないのです。それどころか、漢方の理論では余分な水分が自律神経失調症や精神面に影響を及ぼすケースもあると考えています。
基本的には、水は飲みたい時に飲めば大丈夫。ただし、全然喉が乾かないとか、逆に喉が渇いてしょうがない時などは、その”欲求”の信号が少し狂っているいる場合があり要注意です。水の上手な摂り方を頭に入れて、健康な体を目指して下さいね。