乗り物酔い 漢方.jpg店頭で「乗り物酔いに効く漢方はありませんか?」と尋ねられることが良くあります。もちろん無いことはないのですが、乗り物酔いに関する漢方の資料はあまり見たことがありません。中国漢方はもともと”乗り物”がほとんどない時代に基礎が作られた学問です。その当時にあったとすれば「船」ですが、どちらかといえば内陸で栄えた学問ですし、河川は穏やかなので、「船」に酔うことはそれほど多くなかったように思います。また、「船酔い」があったとしてもそれを止めるために薬を飲むという発想は出ないのではないでしょうか。陸に上がれば治りますしね。
とはいえ、現代生活のように車が増えて「乗り物酔い」が増えている現状があれば、それに合わせて対処を考えて研究していくことが、発展を続ける中国漢方という学問です。生活する上で「乗り物」は避けて通れませんから、その切実な悩みに応えることが必要と感じます。
「乗り物酔い」の症状を漢方的に考えていくと、「吐き気」「めまい」など「水湿」の影響であることは間違いありません。「水湿」とは体内の余分な水分のことです。よって「水湿」が多い体質であると、酔いが生じやすいと考えて、それを除去するためのお薬を服用します。具体的には「勝湿顆粒(しょうしつかりゅう)」や「温胆湯(うんたんとう)」「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」「小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)」などが候補として挙がると思います。
またストレスによって「気」の停滞が生じることも乗り物酔いの原因の一つと思われるため、発散できるタイプの「香蘇散(こうそさん)」なども良い効果をもたらすでしょう。
なお生薬の「丁字(ちょうじ)=丁香(ちょうこう)」が乗り物酔いに効果的であるという話を聞いたことがあります。確かに「丁字」には胃腸を整えて嘔吐を止める働きがあるとされます。しかし体を温める作用が強いため、冷えタイプでお腹を冷やすと気持ち悪くなったり下痢をするというような方が数日前から服用するという形であれば良いと思います。
この「丁字」をおへそに貼ると、乗り物酔いが予防できるという噂(?)も聞きましたが、本当かどうか私にはわかりません。とはいえ、上記のとおり、お腹が冷えている方が貼れば、直接温めて有効である可能性もあると思いますよ。
実は私も子供の時は乗り物酔いがひどく、遠足の時などは苦労しました。大人になるにつれ治まりましたが、乗り物酔いは本当につらいものですよね。体質に合わせて漢方を使うと楽になると思いますので、一度お試しになってみて下さい。