胃腸強化漢方.jpg人間にとってもっとも大事とも言える食事。食事を美味しく頂くことが何より幸せなことといっても過言ではないと思います。しかし、胃に不調があると、せっかくの食事の楽しみも半減してしまいます。そしてそれがストレスとなり、さらに胃を傷めるという悪循環にもつながりかねません。
そもそも生命にとって食事を消化吸収する胃腸は、その生体維持のために重要な役割を持ちます。胃腸がしっかりと仕事をしていれば、人間は活発に行動が出来、病気にもなりにくくなるでしょう。逆を言えば胃腸の状態低下が体調に大きな影響を及ぼすことも至極当然です。
漢方にもほぼ同様の考え方があります。”補土派”と呼ばれる学者は、「土」すなわち「脾(胃腸系)」を補うことを最優先して病気を治療しました。「土」は万物の母であるから、そこを満たしていけば健康な体となる、という理屈です。現代でも指示する人が多い考え方となっています。
考えてみるとお薬を吸収する役割を担っている器官も胃腸です。よって胃腸の吸収力が弱ければお薬の効果もダウンしてしまうことでしょう。せっかく漢方薬を服用しても吸収されないで排泄されてはもったいないですよね。
胃腸の弱い方はいわゆる胃薬に頼っている方も多いようです。しかし西洋医学的な胃薬は当面の症状を緩和させるだけであり、胃腸強化には結び付きません。もちろん本当に調子が悪い時には比較的強力な薬もあるため、まずは症状を抑えていくことも大切です。しかしそこに頼っても根本解決にはつながらないため、漢方の理論に沿って対策を考えてみてはいかがでしょうか。
前述したように漢方では胃腸を整えるためには「脾」のことを考えていきます。すなわち「脾」の機能を高めると規定される処方を用いていくことに依って、胃腸強化を図ります。
代表的な処方としては「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」と「六君子湯(りっくんしとう)」があり、まずはこの2種類の処方のいずれかを検討すべきでしょう。しかしながら、しっかりと体質判断をしていくと「黄ぎ建中湯(おうぎけんちゅうとう)」や「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」、「参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)」などのお薬の方が合うケースも多く、その見極めが重要となります。よって専門家の判断を仰ぎ、服用処方を決定することが基本です。
また「脾」機能低下に「肝」が関わっているケースが多く見られます。「肝」とはすなわち自律神経系であり、要するにストレスに依って胃腸が傷めつけられている状態です。このような場合には「脾」のお薬だけでなく、「肝」に対してのケアも考えていく必要があります。代表処方は「加味逍遥散(かみしょうようさん)」であり、上記の「脾」のお薬と併用する事などに依って、より早く症状を軽減することにつながります。
さらに漢方薬だけでなく食生活も考えていく必要があります。どれだけ漢方薬で胃腸のケアに努めても、毎食の負担が大きければ効果は限定的となってしまいます。ファーストフードやお菓子、生ものや冷たい飲料は胃腸の敵です。コーヒーなども刺激となります。全くゼロにする必要は無いかもしれませんが、出来る限り摂らないように心がけてみましょう。