緑内障の漢方.jpg緑内障は眼圧が上がり、視覚障害が生じる病気です。中高年の約6%が罹患する病気と言われていますから、珍しい病気ではありません。放置をすれば失明の可能性があるあなどってはいけない病気ですが、その治療法はほぼ確立されているため、しっかりと対処できればそれほど怖がる必要はありません。
ただし急性緑内障の場合には、急激な眼圧上昇で吐き気や頭痛を生じ、失明の危険が高まります。緊急的な治療が必要であることを覚えておきましょう。
緑内障の治療方法としては各種薬剤が開発されています。しかし副作用が多かったり、喘息を持っている方に禁忌のお薬もあったり、長く服用しても安心とは言い切れない内容となっています。また原因が分かっていない疾患ですから、基本的には手術以外では根本的な治療方法はありません。
もちろん眼圧の測定もありますので眼科優先の治療で問題はありませんが、西洋薬が合わない方、思ったほど効果があがらない方、長い目で見て緑内障対策を考えたい方などは漢方の服用を検討しても良いのではないでしょうか。
さて緑内障の治療を考える際にもっと重視すべきは、”水”の存在です。眼圧が上がる原因として目の中の水(房水)の排泄が上手くいっていない可能性があり、そのケースでは”利水(余分な水を取り除くこと)”を考えて処方を組み立てていきます。もちろんその有無の判断には漢方的な診立てを欠かすことは出来ません。目の症状だけでなく、全身状態から体質を判定し、最も適する処方を考えていくべきでしょう。
具体的には「五苓散(ごれいさん)」「柴苓湯(さいれいとう)」などが候補として挙げられます。
また目の症状に対しては五行説で規定されている通り、「肝(西洋医学的に言えば自律神経系)」との関係も考えていくべきです。主にストレスが原因で「肝火」と呼ばれる体内の”熱”が発生して悪さをし、緑内障の要因の一つとなっている可能性があります。その場合には「肝火」を鎮めるための漢方薬である「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」などの服用を考えます。
さらには、「お血」の存在も考えられます。「お血」とは血行不良のことですが、この「お血」の存在が”水”を貯まりやすくしてしまったり、神経を障害してしまうなどの原因になるとも考えられます。
緑内障は年齢と共に増える病気ですが、加齢で進むとされる「お血」体質との関係性があるとも言えるかもしれません。具体的には「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」や「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などの適用が考えられますが、これも「お血」の程度等を考慮して慎重に処方を選択すべきでしょう。
緑内障は今後の高齢化社会でますます増えていく病気かもしれません。しかし、その要因を漢方的に考えて、あらかじめ予防しておくことも可能です。また一度診断された場合でも、完全に治らないからとあきらめず、現状維持を目指して対策を考えていくことも重要です。緑内障がある方は、何かしらの身体のバランスの乱れがあるはずですから、それを見極めた上で漢方薬を服用してみましょう。