脊柱管狭窄症と漢方.jpg脊柱管狭窄症は、この数年でよく聞くようになった病名です。今までは腰痛、下肢痛もしくは坐骨神経痛で済まされていた症状に病名を付けると、ものものしく「脊柱管狭窄症」になるのではないでしょうか。数年前はみのもんたさんがこの病気になりましたよね。
脊柱管は脊椎にある神経を囲んでいる管ですが、その部分が狭くなって、神経が圧迫されるために痛みが生じるとされます。しかしこの脊柱管が狭くなる現象は、加齢に伴って起こる生理現象とされ、狭窄が起こっていても痛みが感じられないケースもあるようです。
ということもあり、脊柱管狭窄症の統一された診断基準はなく、医師の主観によって、画像診断や問診の結果により総合的に判断されているそうです。
主な症状は腰からおしりにかけて、もしくは太ももやふくろはぎの痛みであり、座ったり腰を曲げると軽減し、歩いたり走ったりすると悪化するという特徴があります。その他に膀胱や直腸の障害、性機能不全、会陰部の感覚異状などを伴うケースもあります。多くは年齢と共に出現するのですが、先天的な脊柱管異状によって起こるケースもあるそうです。
脊柱管狭窄症は物理的な現象で、神経が圧迫されて引き起こされる症状となりますので、根本的な対処方法としては手術という形になります。ただし手術をしても再発することが多いとされます。
手術を実施しないケースでは、痛み止めを使ったり、神経ブロックを行う場合もあるでしょう。
いずれにしても、脊柱管狭窄症が起こった根本の生活習慣や体質を変えない限り、また似たような症状を引き起こす可能性が大いにあります。痛みがひどい時には病院での治療を優先すべきと思いますが、再発予防のためであったり、症状が落ち着いたがもう一息という場合などに漢方薬の使用を考えても良いのではないでしょうか。
漢方の理論で考えると、脊柱管狭窄症の場合は、まず「お血」体質の存在を疑います。「お血」とは簡単に言えば血行不良のことで、広い意味では経絡の詰まりもあると考えられます。
ただし、動くと悪化するという部分は「お血」の特徴に当てはまらない部分があります。加齢で悪化するということもありますし、脊柱管狭窄症を「お血」体質だけで片づけることは危険です。「虚」すなわち体の消耗があることは間違いなく、特に「腎虚」の存在を疑います。
「腎虚」とは「腎」すなわち中医学で云う生命力が消耗した状態であり、原則としては年齢と共に少しずつ進んでいきます。よって「腎虚」のケアを考えつつ、「お血」のことも頭に入れて漢方薬の処方を考えていきます。
具体的には「腎」を補いながら痛みにも対処が出来る「独歩顆粒(どっぽかりゅう)」が適応になることが多いでしょう。しかし「腎虚」が強いと疑われるケースや、疲労等消耗が激しい際には「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」や「イーパオ」などと合わせたり、逆に「お血」が認められる場合には「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」や「散痛楽楽丸(さんつうらくらくがん)=疎経活血湯(そけいかっけつとう)」を使います。
脊柱管狭窄症も歩行に支障をきたすような重度のケースから、たまに痛む軽度な場合まで、様々です。病名にあまり慌てることなく、主な原因は体の衰えや使いすぎと認識しましょう。そして痛みは体からのSOS信号と捉えて、漢方でお体のケアが出来るといいですね。それが他の病気の予防にもつながっていくと思いますよ。