最近は内視鏡検査で萎縮性胃炎と診断されるケースが増えているように感じます。萎縮性胃炎は読んで字のごとく、胃に炎症と共に萎縮が生じている状態ではありますが、診断の明確な指標があるとは言えず、医師の判断で形態的に委縮が認められると萎縮性胃炎とされるようです。
主な原因はピロリ菌感染であり、まず胃炎が生じ、長期間経過すると萎縮が生じると考えられています。ただし、ピロリ菌の感染が認められないケースもあるため、その他の要因も合わさり生じている現象と考えられます。
胃が形態的に委縮している状態であるために、治りにくいとされていることや、将来胃がんになる可能性を指摘されて不安になる方も多いようです。また、自覚症状がないケースも多く、医学的には経過観察で様子を見ることとなり、逆に大丈夫かなと思ってしまうこともあるでしょう。不安が逆にストレスとなり、胃への負担増を招いてしまうことも考えられます。最近の検査技術の進歩は、もちろんメリットもありますが、このような弊害を生じてしまう危険性もあるわけです。
ということもあり、萎縮性胃炎と診断された場合に、何か対策をと考える時に検討して頂きたいのが漢方薬です。自覚症状があれば、それに対応する制酸剤や胃粘膜保護剤が処方されると思いますが、これらのお薬を何年間も服用することに抵抗がある方も、漢方薬の服用を考えてもよいでしょう。
具体的には、萎縮性胃炎の場合炎症ですから漢方で云う「熱」が関係していますので、「熱」を冷ます漢方薬を検討します。とはいえ、胃が弱っていることも多いため、胃の機能を高めることも考慮します。処方で言うと「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」や「星火健脾散(せいかけんぴさん)」などが合うケースが多いようです。さらには萎縮は組織の変性ですから、「霊芝宝(れいしほう)」のような免疫調節作用がある漢方を考えた方が良い場合もあります。
そしてストレスを上手に発散して、刺激物、コーヒーなどは控えめにしていくと良いと思います。
いずれにしても、自覚症状や体質を考えての総合判断が大切です。同じ萎縮性胃炎であっても、人それぞれ合うお薬は異なります。漢方の専門家によく相談をして対処方法を考えてみましょう。