先日歌手のレディーガガさんが罹患しているというニュースがあった「繊維筋痛症」。筋や骨格を主体として全身の痛み、特徴のある圧迫痛を認める病気です。病名を見ると痛みだけの病気に思えますが、強い疲労感を伴うことが多く、睡眠障害や精神不安症状も同時に起こるとされます。私の手元の医学辞書にも慢性疲労症候群と同じ項目に記載されているとおり、痛みももちろんですが、同時に起こる疲労感が患者を苦しめる病気と感じます。なお血液検査、画像検査等には異常を認めません。
繊維筋痛症は中高年の女性に多いとされ、決してまれな病気ではありません。ウイルスの関与、遺伝素因などの関与が疑われるそうですが、未だ原因が確定していない病気のため、治療法も確立していない状況です。
このような病気による痛みや疲労感は他人に伝わりにくいため、「辛さが周りに理解されていないのではないか」と感じやすく悩みは深くなります。命に影響を及ぼす病気ではないとされますが、このような辛さから自ら命を絶つケースもあるのではないかと思われ、決して軽く見てはいけないと私は考えます。
繊維筋痛症は治療法が確立されていないため、病院では抗不安薬などを処方されたり、鎮痛剤を投与されることもあるようです。これらで症状が軽減されることはあっても、根本的な治療は難しい現状があり、また病院の薬の服用がためらわれる時などには漢方の服用を検討されても良いのではないでしょうか。
漢方の考えで繊維筋痛症は、「痺証(ひしょう)」と捉えます。「痺証」とは痛みを伴う病気全般を言い、これは「気血不足」すなわち体の消耗がある状態に、「外邪」が体に侵入し、経絡などの流れが阻害されて、痛みが起こると考えます。
「痺証」にはさらに細かな分類がありますが、繊維筋痛症の場合には「湿痺」が多いのではないか、と個人的には考えます。「湿痺」とは体に余分な水分である「湿邪」が溜まったことが原因で起こる「痺証」であり、痛みやしびれとともに、体が重だるくなり、しつこく定着して治りにくいとされます。
この場合は「湿」を除くための漢方処方として「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」などを使用しますが、流れの改善のために「疎経活血湯(そけいかっけつとう)」「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」などを併用することもあるでしょう。また「湿」を除きながら体を滋養する「イーパオ」も候補のお薬です。
なお「湿」は飲みすぎ食べ過ぎが原因の一つとなります。お腹を労わり、冷たいものは控えるといいですね。
もちろん繊維筋痛症イコール「湿痺」ではありませんので、他のタイプの「痺証」の可能性もあります。そのタイプの見極めが重要であるため、漢方薬の服用をお考えの方は、漢方薬局にて専門家とゆっくりご相談の上、服用薬を決めて下さい。
≪参考図書;今日の治療指針(医学書院)≫