誰にでも起こり得る症状であるぎっくり腰。私も若い時は「ぎっくり腰なんて」と思っていましたが、30代前半でしたでしょうか、これぐらいは大丈夫と重いものを持った瞬間、鈍い痛みが襲い、動けなくなりました…しかも、数か月後に油断してまた繰り返し…
すぐに治ればいいですが、尾をひくと数日間仕事が出来ないというケースもあり、侮れない症状です。
ぎっくり腰は医学的には急性腰痛と呼ばれ、90%以上自然軽快するとされます。安静に寝ているべきではなく、痛みがひどくならない程度に日常生活を行う方が良いとされます。もちろん運動は控えなければなりませんが、ひどく痛む場合に内服の鎮痛剤を飲む程度で、注射治療なども行うべきではないとされます。
ということですが、これらはぎっくり腰になってからの話。やはりぎっくり腰になってからでは仕事や生活に支障をきたしてしまいますので、起こさないことが一番。そこで今回はぎっくり腰にならないように予防する方法を漢方の考え方で見ていきたいと思います。
まず漢方では腰を支配する臓は「腎」と考えます。腰は生物の身体の中心部分です。四足歩行をする動物にとって、陽にあたる腰が中心、表であると考えるのです。そして「腎」は生物の生命力と関係する臓。すなわち「腎」が弱ると、身体の中心の腰も弱ると言えるのです。高齢になり、腰が曲がっていく現象も、加齢で「腎」が衰えるためと考えられます。よって「腎」に負担がかかっていると腰に症状が出やすい、すなわちぎっくり腰にもなりやすいと思われます。
もう一点、「気」の問題も考えられます。「気」は体を持ち上げ、保つ作用があります。この「気」が不足していると、姿勢を保つことも難しくなります。疲れてくると、背筋をピンと保つ姿勢が辛くなってきますよね。「気」の不足(「気虚」)が腰の力を奪い、何らかのきっかけで、ぎっくり腰になるという図式です。
よって、ぎっくり腰を予防するためには「腎」を守ることが第一。
具体的には「補腎薬」と呼ばれる「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」などの服用です。場合によっては「腎」を補いながら、痛み止めの作用を持つ生薬が含まれる「独歩顆粒(どっぽかりゅう)」の服用も検討します。
そして「気虚」対策を行うことも考えてみましょう。特に、疲れるとぎっくり腰を起こしやすい方は「麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)」「補中丸(ほちゅうがん)」などの「気」を補うお薬の服用をお勧めします。
ちなみに運動に関してはぎっくり腰予防にある程度役立つとは思いますが、過度の運動は逆効果と感じます。無理をしない、疲れをためないことがもっとも重要です。もちろん睡眠もしっかりとりましょうね。
≪参考図書;今日の治療指針(医学書院)≫