網膜剥離は、その名のとおり、網膜が上皮細胞層より剥離して、網膜の下に水が貯留してしまう病気です。基本的には痛みがないため分かりにくく、飛蚊症や視力低下を認識して眼科を受診し、判明することが多いようです。
ボクサーしかならないような印象があるかもしれませんが、加齢によって起こることも多く、若年者でも発病することのある病気です。
20代と50代で多いというデータがあるそうです。
網膜剥離の治療は、眼科において外科的な対策を優先すべきです。しかし手術が適応とならない場合や、繰り返し生じてしまう場合、手術を受けることに抵抗がある場合などは、漢方的な対策を考えてみても良いでしょう。また、網膜剥離に遺伝的な要素はないと思いますが、近親者に網膜剥離が多い場合などは、予防を考える方もいらっしゃると思います。そのような場合も網膜剥離にならないようにする手段として漢方の服用を検討してみましょう。
さて漢方の理論から網膜剥離を考えてみます。まず目の病気であることから「肝」との関連性を考慮しなければなりません。漢方で云う「肝」は自律神経系と関係し、目につながっているとされます。
よって「肝」のケアをすることが網膜剥離対策になると考えられます。具体的な漢方薬としては「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」が挙げられ、このお薬は「腎(生命力と関係)」を補う作用もあるため、加齢による原因が疑われる場合には、より適していると思われます。
またストレスが大きくかかることも「肝」の機能失調につながります。よってストレスが多く、網膜剥離を患った方の場合には、「逍遥丸(しょうようがん)」など、「肝」の機能を補佐して、「気」の流れをスムーズにさせる漢方が必要と考えられます。
そして網膜剥離は水が貯まる病気でもあるため、漢方で云う「湿(余分な水分)」があるかどうかも考えていく必要がありそうです。目が腫れぼったいなどの症状の他、全身症状として体が重だるかったり、軟便傾向の方は、「湿」を除く漢方薬服用も検討した方が良いでしょう。具体的には「五苓散(ごれいさん)」や「シベリア霊芝」などが挙げられます。
さらには血流が悪い状態も目の機能に影響を与えますので、網膜剥離につながることもあると考えられます。全身症状も診たうえで、「お血」体質があれば、「冠元顆粒(かんげんかりゅう)」など血流対策の漢方薬の服用も必要でしょう。
いずれにしても網膜剥離と云う目の病気であったとしても弁証(体質判断)が重要であり、漢方の専門家による診立てが必要です。目は生活上とても大切な器官であることは言うまでもありません。健やかに過ごすためにも漢方薬の服用を検討してみましょう。
【参考図書;今日の治療指針(医学書院)】