パーソナリティ障害は、WHOの診断基準では「その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないもの」と定義されています。日本語では「人格障害」と言われることもありますが、要するに「無意識に周りの人とは異なる行動をとってしまう症状」です。
「変わった人」と捉えられがちですが、精神疾患の一種であり、最近では適切な治療で改善の可能性が高いとされます。

原因は、遺伝性と環境的要因があるとされ、全体で見れば男女差は無いと言われています。米国では約13%の人がなんらかのパーソナリティー障害を持っているという結果があり、この数値だけを見れば、非常にありふれた疾患とも言えます。
とはいえ、問題はその程度と、具体的にどのような生活上の問題があるかという点です。現在はそのグループとして6つの分類があります。
1)統合失調型パーソナリティ障害…変わった思考や会話が特徴です。
2)境界性パーソナリティ障害…女性に多いとされ、小児が見捨てられた時と似た感情、落ち込みや不安感、孤立感などを感じやすくなります。自傷行為や薬物乱用などを行ってしまうことが多いため、病院での治療がもっとも必要とされます。
3)反社会性パーソナリティ障害…男性に多いとされ、衝動的な暴力や反社会的行為を行ってしまいます。アルコール依存になることも多いとされます。
4)自己愛性パーソナリティ障害…傲慢な態度を取り、周りに認められないと怒りなどの感情を起こします。
5)回避性パーソナリティ障害…不安や緊張を生じやすく、社会との関わりを避けようとします。
6)強迫性パーソナリティ障害…こだわりが強く、変化を望まず、融通がきかないという特徴があります。

さて病院でのパーソナリティ障害の治療は、対症療法となります。薬としては抗うつ薬や抗精神病薬などが使われますが、少量を短期間の使用が推奨されます。しかし、特に日本では長期間にわたって服薬されているケースが多いようです。

このように医学的な治療が限られているなか、漢方を用いた対策も検討の余地があるのではないでしょうか。具体的には下記のような対策が考えられます。

◎境界性もしくは回避性パーソナリティ障害のような、不安感が強いケースには、「心脾顆粒」などの「血」を補いながら安心感をもたらす漢方薬が適します。

◎反社会性もしくは自己愛性パーソナリティ障害のような、攻撃性が問題となるケースには、「肝」をケアし、高揚を抑える、「柴胡加竜骨牡蠣湯」や「天王補心丹」などの漢方薬が適します。

◎統合失調型パーソナリティ障害の場合は、症状が不安定であれば「逍遥顆粒」など、落ち着きがない状態が強ければ「天王補心丹などを検討します。

もちろんいずれの場合にも、漢方的な体質判断が大切です。専門家によるカウンセリングなどももちろん重要ですが、精神的な問題は体から生じていることが多いと漢方では考えます。ぜひ、漢方の専門家に一度ご相談をされてみて下さいね。

≪参考図書;メルクマニュアル、厚生労働省HP≫