現在の日本は飽食の時代。人類の歴史の中でまれな環境となっています。生物としての人間は、飢餓に対応する体の仕組みはいくつも備わっているのに対し、食事が過剰な状態に対しての備えは少ないことが知られています。インスリンは血糖が高くなった時に働くホルモンですが、このような働きを持つホルモンは一つしかなく、逆に血糖が低くなった時(飢餓状態)に脂肪を分解して体の働きを維持するホルモンは多数存在します。
このようなこともあってなのでしょう、糖尿病、高尿酸血症(痛風)、高脂血症(高コレステロール)を代表として、結石、高血圧、腎不全など、美食や過食が原因の一つとなる病気が多くなっています。また、腰痛や関節痛などでも体重増加が足腰に負担となることから、食べ過ぎが原因となっているケースもあります。
そして、このような病気になると病院から求められるのが食事制限。かなり厳しいカロリー制限や減塩を提示されて、実践されている方が多い印象です。
しかし、真面目り取り組み過ぎている方があり、低栄養となっているケースが見受けられます。この低栄養は侮ることは出来ません。以下が低栄養で生じる可能性がある病態です。
★精神的な活力を低下させ、うつ病や不眠などの原因に
★免疫力が低下、病気にかかりやすくなり、がんなども
★認知機能低下、認知症に
★筋力低下に伴い、転倒が増え、骨折もしやすくなる
★月経不順、PMS、不妊症に
★皮膚が乾燥しツヤがなくなり荒れやすくなる、抜け毛が増える
中医学・漢方の考えでは「気虚」「血虚」が生じている状態。エネルギー、栄養の不足です。
食事の必要量は、年齢や筋肉量、活動量によって変わることはもちろん、ストレスや脳の使用状態、天候によっても左右されると私は考えます。個人差だけでなく、日によっての変動も大きいのです。カロリーなど数値だけで測れるものでは無いため、厳しい制限は健康にとって大きなマイナスで、病気の治療のために他の病気が発生して寿命を縮めてしまっては意味がありません。また生活の質の低下にもつながります。
「お腹が空き過ぎてつらい」「疲れ、だるさがひどい」「気力がわかない」などの兆候が出たら要注意です。たんぱく質を中心に食事量を適度に増やすことをおすすめします。場合によっては漢方の併用も必要です。
食事を美味しく楽しく食べて、有意義な毎日を過ごしたいものですね。