疥癬とは、皮膚にヒゼンダニが寄生して発症する皮膚病です。ヒゼンダニはとても小さく、目には見えません。人から人へと感染する病気ではありますが、主に皮膚と皮膚が触れ合うことによってうつります。よって、寝具や衣類を感染者と共有してもすぐにうつるわけではありません。また、畳やカーペットなどではヒゼンダニは繁殖できないとされます。ダニと言えば、”清潔が大事”と考える方が多いかもしれませんが、疥癬の場合はあまり関係ありません。
疥癬については、最近高齢者施設での集団感染が問題となっているようです。疥癬の中でも重篤なノルウェー疥癬(角化型疥癬)の場合にはヒゼンダニの数が普通の疥癬に比べて1000倍以上とされ、その場合には患者を隔離した方が良いとされます。免疫力が低下している方がヒゼンダニに感染した場合や、ステロイドが多用している方はノルウェー疥癬になりやすいとされます。
疥癬は診断がすぐにつかないことが多いとされ、アトピー性皮膚炎と間違われてステロイドを処方される方もいらっしゃるようです。しかし疥癬にステロイドは禁忌であり、使用してはいけません。免疫を抑制してしまいヒゼンダニの繁殖を助長してしまうからです。
疥癬は丘疹(盛り上がった湿疹)が頭部以外に起き、胸部、腹部、脇周辺、太ももに出やすいとされます。強い痒みを伴うのはアトピーと同じですが、自己判断でステロイドを使用したりしないようにしましょう。
西洋医学的には、ヒゼンダニの存在を確認した場合には、治療としてストロメクトールというダニを殺すお薬を使用します。また、痒み止めには抗アレルギー剤を使用することが多いでしょう。痒みはすぐに収まらなくとも、ダニは薬でどんどんと減っていきます。
このように疥癬と診断された場合は、皮膚科での治療が有効です。しかし問題は大きく分けて二点あると思います。
★ストロメクトールでダニを殺しても、痒みがなかなか収まらないことがある
★疥癬が再発しやすい
このような問題への対処として漢方の考えを応用しても良いのではないでしょうか。
まず痒みについてですが、赤味のある丘疹が多いことから、漢方的には「熱毒」の存在がまず考えられると思います。また痒みも強いことから「風邪(ふうじゃ)」も関与している思われます。よって「五涼華(ごりょうか)」や「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」などの「熱」を取り除く処方や、「消風散(しょうふうさん)」などの「風邪」を排除する漢方薬が有効となるケースが多いでしょう。
次に再発の問題ですが、これは免疫力と関係してきます。免疫力の低下はすなわち「気」の不足を示しているため、「気」を補う処方である「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」や「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」を服用することが再発防止になっていきます。特に高齢者の方には、疥癬対策だけでなく、様々な病気の予防につながるため、「気」を高める漢方薬は有効でしょう。
さらには瑞花露スプレーなどで、スキンケアで肌の痒みを和らげる工夫も出来るといいですね。
もちろん疥癬は皮膚科の治療が優先です。しかし漢方薬が役立つ場面もあることをぜひ覚えておいてくださいね。
疥癬
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