慢性扁桃腺炎と漢方.jpg「扁桃腺が腫れる」という言葉は良く耳にしますが、扁桃腺とはどういった器官がご存じでしょうか。扁桃はリンパ組織であり、リンパ組織とは身体に侵入してくるウイルスや菌を防ぐための部位です。言うなれば免疫を担っているのがリンパ組織であり、扁桃腺もその一つです。ちなみに医学用語では扁桃腺という言い方はせず、単に扁桃と呼びます。
その扁桃腺が腫れた状態が扁桃腺炎であり、繰り返し起こると一般的に慢性扁桃腺炎などと呼ばれます。医学的には扁桃周囲炎などとされる状態でしょうか。要するに扁桃腺の腫れが引かずに、症状が何度もぶり返してしまっている病態ということになるかと思います。
扁桃腺は前述した通りリンパ組織であり、病原体が集まって来る場所とも言えます。つねに細菌が存在しますが、免疫力が落ちてその細菌に依る感染が起こると炎症、すなわち腫れが起こってしまうと考えられています。リンパ組織は体の免疫を担う最前線です。その部位の腫れはそこで病原菌と体が必死に戦っていることを示していますが、せめぎあいで決着がつかないと慢性化してしまうのでしょう。
扁桃腺炎の症状は、喉の痛みと共に比較的高熱が出て、全身のだるさと痛みが生じることが多いとされます。しかし、喉の痛みだけで終わることもありますし、高熱が出てすっと収まるケースもあるでしょう。
病院では抗生物質を処方されることが多いのですが、喉の痛みがひどくてお薬も飲めないようなケースがあります。その場合は注射でお薬を投与したりすることもるでしょう。子供がたびたび高熱を出すとなると非常に心配になりますので、慢性化してしまった場合には外科的な治療(扁桃切除等)も考慮に入れて対策を立てることになります。
ただし手術はやはり体に負担がかかりますので、別の予防方法、対処法を考えていくうえで漢方も検討の余地があるのではないでしょうか。
さて慢性扁桃腺炎の状態を漢方で考えると、炎症が常態化しているため、”熱”が存在すると考えます。特に”風熱”の邪気の存在が疑われるため、それを追い出すための処方である「天津感冒片(てんしんかんぼうへん)」や「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」「柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)」「桔梗石膏(ききょうせっこう)」などが考えられ得る処方となります。もう一つ「板藍茶(ばんらんちゃ)」という炎症を鎮め、風邪予防に使われる「板藍根」配合の商品も検討に値します。
また、そもそもの防御力が足りないという点では、「衛気」という漢方で云うバリア力の欠如が疑われます。よって、その「衛気」を増すためのお薬である「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」をやや長期的な観点から服用してくことも重要でしょう。
ただしお子様の年齢や他の病気の有無、根本の体質の分析など、様々な状況を考慮して服用すべきお薬を決めていきます。よってまずは漢方の専門家にかかり、しっかりとした体質判断を仰ぎましょう。
慢性扁桃腺炎は病気の本人はもとより、周りの大人も苦しめることになる病気です。ぜひ漢方で根本的な対策を考えて、早く健康な体を取り戻しましょう!