中医学には「五硬」という小児の病名があります。首、口、手、足、肌肉の五つの部位が硬い症状で、胸や腰は柔らかく、手足は冷たいという特徴があります。寒冷地に多い病証とされ、早産の際にも起こりやすいと言われます。
現代医学でこのような症状がピッタリ当てはまる病名は思いつきませんが、子供の手足が冷たいことを気にするお母さんは多いように思います。また、自閉症傾向がある子で、手足が硬くこわばり、時にけいれんを起こすようなタイプも見受けられます。
このような病気とは言えない症状であっても、中医学的にみると体のバランスの崩れが原因と考えられるケースは多く、その対策を取ることで体全体の調子が良くなることもしばしばです。ぜひ古くからの経験から構築された漢方理論で、体のケアを考えてみて下さい。
さて「五硬」の話に戻りますと、「五硬」の原因は大きく二つに分けられるとされます。
一つ目は「陽気虚衰」、すなわち体のエネルギー源である「気」が足りないために起こっていると考えます。この場合は、体が弱々しく、睡眠が多くなり、声も低く力がなくなります。
よって「陽気」を補完するために、人参や附子の入った漢方薬を服用します。具体的には「真武湯」「人参湯」などが候補となります。
二つ目は「寒凝血渋」と呼ばれる、身体に強い冷えが入った状態です。皮膚だけでなく、唇や舌も青紫に変化します。
この場合は、経絡を温めて流れを改善する漢方薬である「当帰四逆湯」などを服用します。
とはいえ、手足が冷たいとお母さんが感じても、その子供の多くは、上記のような極端な病態ではありません。子供はまだまだ体が未熟ですから、流れが安定せずに、急に手足が冷たくなったり、硬くなったりします。基本的に今の世の中は子供を温めすぎる傾向があるように思いますので、手足が冷たいだけであれば、あまり気にし過ぎないようにして下さいね。
逆に自閉傾向があり、手足が冷たいだけでなく硬さもあるような場合には、積極的に漢方を使うことで、自閉症対策にもなりますよ。