不妊治療における現在のスタンダードは、もちろん西洋医学による病院での治療です。最近不妊に漢方が良いことが注目され始めていますが、まだまだ脇役であることは間違いありません。しかし病院での不妊治療を何度やっても上手くいかなかったりする場合に、漢方を併用する方が増えています。メインが西洋医学的な不妊治療で、漢方はサブでという方法です。
確かに絶対的に西洋医学が必要である場合もありますし(無精子症など)、治療と並行して少しでも妊娠の可能性を高めるために漢方的な体質改善を行うという考え方が当然なのかもしれません。私もそのような方法を否定しません。結果として元気な赤ちゃんが授かれば良いのですし。西洋薬の良いところはそのままに、悪い面を漢方でカバーする、というような関係が良いのでしょうね。
さて具体的に例えば体外受精を検討している方が、漢方薬の服用を考えるケースでは以下のような例が挙げられます。
★採卵時に出来るだけ良い卵が採れるように漢方を飲みたい
卵の質が年齢とともに低下していくという点は西洋医学では対処できません。一方、中医学では「腎」という生殖力と関係する部分を補うことにより、「若返り」を目指すことが出来ると考えます。実際問題として「若返り」は簡単ではないものの、漢方薬の服用で採卵時の状態が向上することはよく経験します。体質に合わせて適切な「腎」の薬を選択することが必要ですが、「オリジン」や「六味丸」といったお薬が良く使われます。
★受精卵移植後に着床が上手くいくように漢方を飲みたい
着床に関しては西洋医学でもまだブラックボックスである部分が多いものです。体外受精で分割は進むものの、いざ戻しても妊娠に至らないというケースは「なぜ」という疑問を夫婦に投げつけます。しかし子宮に卵が根付くには、卵を迎え入れる準備が母体に整っていなければならないのです。そしてその準備、具体的には子宮内膜の質を良くすることは、西洋医学ではなかなか難しいのが現状です。
中医学では、子宮内膜に新鮮な血液が十分な量届けば、赤ちゃんのふかふかベットが出来上がると考えます。しかし血行が悪い体質であったり、”血”の量が少ないと、ベットは薄くて固い状態となり、赤ちゃんは逃げてしまうのです。その場合「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」など、”血”の状態を改善するお薬を服用すれば内膜の質は改善し、着床の成功へと近づくことが出来るのです。
★ホルモン剤などの副作用が気になるので漢方を使いたい
体外受精の場合は、採卵の時期を調整するために必ずホルモン剤を使います。その場合に吐き気や、胃腸障害、のぼせなどの副作用が出る場合も多いものです。その場合にも漢方薬を上手く併用すれば副作用を軽減することができる場合があります。
また排卵誘発剤として使われるクロミッドによる子宮内膜を薄くし頚管粘液を減少させる副作用に対しても、漢方薬が使える場合が多いでしょう。
以上主な不妊治療と漢方を併用するケースを述べましたが、まだまだ様々な状況があります。また同じようなケースでもその方の体質に合わせてお薬の選択を臨機応変に行っていくことが重要です。不妊に詳しい漢方薬局に出向き、一度詳しくご相談されると良いですね。
漢方薬局に行く利点はもう一つあります。病院ではなかなか聞けないような不妊治療に関する悩みや疑問などに答えてくれるという点です。病院での不妊治療は、精神的にも肉体的にも大変であるのに、一人で悩みを抱えてしまいがちですが、漢方薬局で話して気持ちも楽になれば、それだけでも赤ちゃんを授かる可能性が高くなると思いますよ。
不妊治療(体外受精など)中の漢方
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