20代、30代で閉経してしまう早期閉経(早発閉経)。日本産婦人科学会の資料によると、30歳未満の0.1%、40歳未満の1%にみられるとされます。30代で100人に1人の計算ですから、日本全体では何万人という数になってきます。これから妊娠を考えようとしていた女性は非常にショックですし、女性ホルモンの減少に依って骨粗しょう症などのリスクも高まるとされます。そして何より、生理が止まってしまうということは、女性にとっての精神的なダメージがとても大きいと感じます。
血中の検査でFSHが高かったり、不妊の検査をする病院ではAMHが0に近いと、早期閉経の可能性が高くなります。染色体異常が15%で認められたり、甲状腺機能の問題、全身性エリトマトーデスなどの自己免疫疾患が関係していることもあるとされますが、ほとんどは原因不明とされます。
しかし、閉経して何年も経っているような状況でなければ、排卵誘発剤などで排卵を起こすことは不可能ではありません。とはいえ、妊娠に必要な排卵が簡単には起きない状況なのですから、妊娠も容易ではないと覚悟が必要です。やはり生理は女性の体調のバロメーターですから、それが止まるということは体の状態が良いとは言えません。28日であった生理周期が25日、23日と短くなってきたら30代の方でも注意が必要と考えます。
上記のように、まずは医学的にホルモン剤での対処が原則としても、その治療に抵抗がある方はもちろん、ホルモン剤投与と並行して妊娠の可能性を高めるために漢方薬の服用を検討してみてはいかがでしょうか。そして現在の生理は順調であっても、早期閉経が気になる方は、予防としての漢方服用もお勧めします。漢方は精神的なケアも出来ますし、早期閉経を予防するということは若返りを目指すことにもつながりますよ。
さて漢方的に早期閉経は「腎虚」に他なりません。「腎」とは、生殖力・生命力と関係する臓であり、この「腎」の消耗や体質的な弱さが早期閉経の要因と捉えます。「腎虚」の場合には、体力がなく、骨格も弱々しい傾向がありますが、「腎」を補う漢方薬である「杞菊地黄丸」「参馬補腎丸」「亀鹿仙」などを服用することで、「腎」の消耗を抑えることが出来ます。
また、「腎」は先天的な要素が大きいのですが、後天的なエネルギー補給、すなわち食事を十分とって胃腸からの栄養が満たされていれば、早期閉経を予防できるとも考えられます。この点から胃腸系の漢方薬(補中丸など)を服用するということも検討します。
さらには、生理には「肝」の経絡が関わっていることから、ストレスが早期閉経に関わっていることが考えられる場合には、「肝」をケアする漢方薬である「加味逍遥散」「きゅう帰調血飲第一加減」などを使うケースもあるでしょう。
いずれにしても早期閉経を嘆いているだけで何も対処しなければ、卵巣の委縮が進み、ますます状況は悪くなってしまいます。ぜひ漢方的な対処も考慮し、対策を考えてみて下さいね。
≪参考図書;日本産婦人科学会雑誌2010年1号、今日の治療指針(医学書院)≫