口角炎は口元に出来る炎症です。腫れや痛みを伴うことが多いとされます。私も昔よく出来た記憶があります。冬場は乾燥して痛むため、舌で潤すと楽になりましたが、また風が当たるなどすると痛んで大変でした。また口を大きく開けると痛みますし、食事の時にも違和感を生じるため不快だった覚えがあります。もちろん命に関わるような疾患ではありませんが、生活の質の低下を招く皮膚炎の一つと言えるでしょう。
口角炎は正確な病名では無いようで、手持ちの医学書には出てきません。ただし口角炎を引き起こす可能性がある疾患として「口唇ヘルペス」や「口腔粘膜カンジダ」などは掲載されています。ヘルペスはウイルスであり、カンジダは真菌です。どちらも普段は常在している菌やウイルスであり、免疫力が落ちると発症するとされます。
原因に関しての診断が付けばお薬があり、効果を示す場合もありますが、前述したように根本原因は疲労やストレス、慢性病による免疫力低下であり、まずはその対処を優先すべきでしょう。
ちなみに口角炎は昔から食べた物と関係があり、特に偏食傾向の子供が起こりやすいと言われてきたそうです。確かに医学的に見てもビタミン類の不足が関与しているとも言われており、間違った言い伝えではないように感じます。
さて口角炎の漢方的な対処方法ですが、昔からの言われ通り、胃腸系のケアをまず第一に考えます。口周辺は「脾胃(消化器系)と関わりが深い部位とされています。そして、食事を吸収する胃腸が弱っていると「気」が不足し、いわゆる免疫力も低下しますから口角炎が生じるとされるのです。よって偏食などが無くとも、体質的に胃腸が弱ければ口角炎が生じる可能性があります。
もう少し詳しく見ていくと「胃陰虚(いいんきょ)」と呼ばれる状態が原因とされることが多くなります。胃の「陰」すなわち潤いが不足し、”熱”が生じます。その”熱”が口元に影響を及ぼし、炎症を引き起こします。
よって「胃陰虚」に対する漢方薬である「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」が第一の候補となり、場合によっては似た系統の処方である「参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)」なども検討することとなります。要するに潤いを与えて冷ます作用を持つ処方を原則として考えていくのです。
また、ストレスが関与して「脾胃(消化器系統)」に負担をかけ、その結果として口角炎が生じることもあります。その場合にはストレス対策としての「加味逍遥散(かみしょうようさん)」などの漢方薬も併用していく必要が出てくるでしょう。
ちなみに口内炎で良く用いられる「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」などの炎症を抑えるお薬の方が適している場合もあります。詳しい判断は専門家の診断を仰ぎましょう。
なお食事としては、胃腸に負担がかからない消化の良いものを摂っていくことが原則です。その上でヤマイモなどの胃の陰を増やす食材を多目に摂取出来ればさらに症状は出にくくなるでしょう。逆に冷たいものや生もの、油モノは極力避けて行くことが必要です。
そして疲労を避けて睡眠を十分に取り、ストレスの少ない毎日を送ることが出来れば口角炎になりにくい体作りにつながります。現実的には簡単ではありませんが、漢方薬の服用を含め、口角炎が出来やすく悩んでいる方はぜひ参考にしてみて下さいね。
口角炎と漢方
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