老人性乾皮症.jpg加齢とともに、どうしても皮膚は乾燥傾向が出てきます。60歳でつるつるということは考えにくく、個人差はあるにせよ、30歳ごろからは少しずつ肌の皮脂は減少していくと考えてよいでしょう。老人性乾皮症は、その名の通り、高齢の方に起こりやすい乾燥肌です。とはいえ、前述したように30代でも乾皮症は生じる可能性があります。特に現代は暖房器具の問題や、入浴時の過度の洗浄も影響しているように思います。
老人性の乾皮症は、冬場に生じやすく、湿度が高くなる春に軽快するケースが大半です。明瞭な皮膚の変化がないこともありますが、落屑化やいわゆる魚のうろこのような皮膚となることも多く、痒みがあります。特に下半身に生じやすく、その他背中や腰に出来るケースもあるようです。
医学的には、ステロイドで当面の痒みを抑え、保湿剤で乾燥を守るという対策が主となります。しかし、これらは根本的な解決にはなりません。年齢に伴って起きる症状であるならば致し方ない…と、あきらめてしまう方も多いことでしょう。しかし皮膚が乾燥するということは、体の内面も乾燥が進んでいるということです。そして、この体内の乾燥が乾皮症だけでなく、その他の病気の要因になることも十分考えられます。よって内側から体を潤すことが出来る漢方薬で老人性乾皮症対策をぜひ考えてみて下さい。
さて漢方的には、乾皮症は「津液不足(しんえきぶそく)」もしくは「陰虚(いんきょ)」という体質の影響が考えられます。加齢だけでなく、大量に汗をかくこと、大病、睡眠不足などによっても、これら「津液」や「陰」は消耗します。その消耗が乾皮症を引き起こしている大きな原因と考えられます。
よって、「津液」や「陰」を補う漢方薬を服用することが、体に潤いをもたらすことにつながり、乾皮症対策になってくると考えます。具体的には「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」「温清飲(うんせいいん)」「八仙丸(はっせんがん)」「紅沙棘(ほんさーじ)」などが挙げられますが、なぜ「津液不足」や「陰虚」になったのか、漢方的な原因を探し、それに対応する漢方薬を服用することが大切です。
またバリア不足の観点から、特に疲労が感じられる方は、守る「気」を増す「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」という漢方薬も候補となるでしょう。
老人性乾皮症は命に関わる病気ではありませんが、痒みに依る睡眠不足を招いたり、ストレスの原因となるなど、生活の質を低下させます。体全体のケアにつながる漢方薬の服用をぜひご検討ください。
≪参考資料;今日の治療指針(医学書院)≫