現代医学は検査、数値が症状を表す客観的な指標として重視されます。確かに皮膚が赤い、痒いなどは比較が難しく、治療方針の普遍的な基準には向かないように思われます。
そこで皮膚病において注目されるようになってきた検査数値がTARC(タルク)。アトピー性皮膚炎において、様々な刺激によって産生が促されることが知られているタンパク質です。このTARCタンパク質がアトピー性皮膚炎症状悪化の原因の一つと言われ、皮膚の重症度と比例関係にあるという報告があります。
TARCの基準は大人で450pg/mL未満ですが、700未満は軽度、700以上で中等度とされます。重症の方は5000を超えることも多いようです。なお小児はもともと数値が高い傾向があり、基準値も年齢によって異なり、約750pg/mLが一つの目安となります。
またアトピー性皮膚炎をはじめ、皮膚炎はアレルギーとの関係が深く、そのアレルギーを測る指標としては、血液中のIgE抗体を測る検査があります。このIgEは抗原特異性があるため、スギ、ダニ、ソバなど、アレルギーを起こしやすい抗原を項目として、個々に調べることが可能です。
しかし特に食べ物については信頼性が低いとされ、検査で陽性であっても食べてみても反応しなかったり、逆に陰性であっても、実際に食べると反応することが多いとされます。
これらの医学的な指標は目で見えるため、自分の状態を把握しやすいと言えます。とは言っても数値だけで、皮膚症状を測ることは不可能です。これらの指標を参考にしながら、実際の痒み、赤みなどとの相関を見つつ、治療にあたるべきと考えます。
個人的にはTARCが高いにも関わらず、症状がひどくない場合には、中医学で云う「血分」と呼ばれる体の奥に「邪」が潜んでいる可能性があるのではないかと考えています。油断大敵な状況であり、「血分」の「邪」を追い払う「清営顆粒(せいえいかりゅう)」などが必要な状況がうかがえます。
逆にTARCが低値であるのに、症状がひどく見える場合には、表面上の症状であり「邪」も奥まで届いていないのかもしれません。この場合には「五涼華(ごりょうか)」などの「邪」を発散して追い出す漢方薬が合っていることが多いと考えます。
このような見解はIgE抗体の血清検査にも言え、漢方薬を選択する際の参考資料になるように思われます。
もちろん、漢方の弁証論治(診立て)が大原則ではありますが、このような西洋医学的な検査数値も参考にして、漢方薬を選んでいく時代にもなってきているのではないでしょうか。