ビダール苔癬は、隆起のある発疹を特徴とする皮膚病です。初期の小さい発疹に刺激が継続的に加わることで、個々が重なりあい、丘疹となっていきます。赤みがあり、ざらざらしていて、首の周りに生じることが多いとされますが、腕や足、目の周囲、陰部にも出来ることがあるとされます。痒みが強いことが多く、苔癬化(皮膚が厚くなってしまう)すると治りにくく、慢性化してしまいます。
ネックレスや着衣、髪の毛などが皮膚に触れることが原因の一つとも言われ、女性に多い皮膚病ですが、男性にも見られます。接触性皮膚炎の一種とも言えますが、原因不明のことも多いとされ、ストレスやアレルギーの関与も考えられます。
個人的にはシャンプーやせっけん、洗剤が最初の原因になっていることも多いように感じます。また汗が要因の一つの場合もありそうです。
ビダール苔癬は痒みがあり、掻くことでさらに皮膚病が悪化し、悪循環となってしまうという点が厄介です。あまりにも痒みが強く、寝ている間などにどうしても掻いてしまう場合は、ステロイドで痒みを抑えることも一考です。
しかしそれは根本解決にはなりにくいですし、ステロイドの使用に抵抗を感じる方も多いのではないでしょうか。また陰部の場合には皮膚科に行くことも抵抗がある方がいらっしゃるかもしれません。そのような場合には漢方薬での対処を考えてみましょう。
漢方薬でビダール苔癬に対処する場合も、他の皮膚病と大きな違いはありません。痒みは炎症によって起こっていると考えられるため、炎症=「熱」と捉え、「熱」を冷ます処方を優先的に考えます。また慢性化している場合には「お血」と呼ばれる血行不良が関与していることが多く、その場合は血行を改善する漢方薬を適宜用います。
具体的には「五涼華(ごりょうか)」「清営顆粒(せいえいかりゅう)」などの漢方薬が挙げられますが、皮膚だけでなく、体全体の状態に依る体質判断を行ってから検討します。
また当面の痒み対策にはスキンケアが重要となります。「五涼華」や「五行草(ごぎょうそう)」を用いたパックなどを使って痒みを鎮めなければ、悪循環を断ち切れません。根本解決のための飲み薬と共に、外用も必ず考えていきます。
とはいえいずれにしても漢方の専門家による診立てが重要です。「ビダール苔癬にはこの薬」という考え方はしませんので、ご自身にあった漢方薬を、専門家に相談したうえで見つけて下さい。