夜驚症とは、睡眠中に突然起き上がり、室内を徘徊したり、訳のわからないことをしゃべったり叫んだりする症状を言います。小児、特に小学校入学前に起こることが多く、男の子の方が発症しやすいようです。親としてはいきなり子供が恐怖を感じているような様子で目覚めるので、非常に不安になりますが、本人は覚えていることはなく、数分もすればすぐにまた寝入ります。
なお大人であっても夜驚症症状を起こすこともありますが、原因の良く分かっていない疾患であり、また大きな実害がないため、西洋医学的対処はほとんど行われないのが一般的です。しかしやはり普通ではない症状であるため、漢方的に考えれば何かしらの体のバランスの乱れがあると捉えます。心配し過ぎる必要はありませんが、子どもの体作りの補助と考えて、漢方薬の服用を考えても良いのではないでしょうか。
さて夜驚症は中医学では「心」の問題と捉えるのが一般的です。「心」は「心臓」という意味だけでなく「こころ」という概念もあります。この「心」の不安定さが不安感を導き、夜の異常行動の原因となるのです。よって心の栄養を補給する作用を持つ漢方薬である「甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)」がもっとも良く使われます。
また胃腸系が弱く、普段からイライラが激しい場合には「肝」と「脾」のバランスが崩れて、それが夜驚症の原因となっている可能性もあります。チックやてんかんがある子供に夜驚症が見られた場合には、この体質が絡んでいる可能性が高いでしょう。この場合には「肝」と「脾」の状態を改善する漢方薬である「抑肝散(よくかんさん)」が主に使用されます。
しかしこれ以外の体質があるケースも多々見受けられますので、漢方薬局等で詳しく相談をして、服用するお薬を選択してください。
夜驚症が起こる背景には、心の成長と体の成長がかみあっていないことが主因であるケースがほとんどで、時間とともに良くなっていきます。とはいえ「心に不安を抱えている」状態であることは間違いありません。言葉や行動で子供の不安を取り除いてあげることはもちろん重要ですが、漢方薬で体のケアをしてあげることにより、子供の安心感が増すのではないでしょうか。
夜驚症と漢方
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「自閉症と漢方」