抑肝散 漢方.jpg子供に処方されることの多い漢方薬の一つに「抑肝散」があります。最近は「認知症に効果がある」とのデータが出て、高齢の方にも処方されることが増えてきましたが、以前までは子供の夜泣きや疳の虫専門という感じのお薬であったように感じます。認知症対策と言う点では以前テレビでも話題になりましたね。
「抑肝散」は私も良く使う漢方処方の一つで、比較的穏やかながら、効果のあるお薬と言う実感があります。ただし、現在の「抑肝散」の使われ方は、「子供の夜泣きだから抑肝散」「認知症だから抑肝散」という乱暴な使われ方をしている気がしてなりません。内容的には大きな問題が起きにくい構成成分であるとは思いますが、やはり漢方的な診立てをしっかりとしたうえで漢方薬の選択をしていくべきなのになあ、と感じます。
では、まず「抑肝散」の構成生薬を見てみます。メーカーによって若干の違いはあるかもしれません。
○柴胡
○甘草
○当帰
○白朮
○茯苓
○釣藤鈎
これらのうち「柴胡」や「釣藤鈎」は「肝」に効くお薬、すなわち気持ちを鎮めるために役立つとされ、「抑肝散」の主薬と言っても良いと思います。特に「釣藤鈎」はけいれんなどにも良いため、この生薬が「抑肝散」の”キモ”と言っても良いかもしれません。
そして「当帰」も「肝」の「血」を補うことによって、気持ちを落ち着かせます。
「白朮」「茯苓」「甘草」は胃腸機能を整える作用を持ちます。「肝」に負担がかかると「脾(胃腸)」が障害されるため、その”攻撃”から守るためのものとして配合されています。
そしてもう一つ配合されていることが多い生薬があります。
○蒼朮
この「蒼朮」が私としてはポイントに思っています。ちなみに私の手元の教科書の「抑肝散」には「蒼朮」が含まれていません。
なぜ日本での「抑肝散」に「蒼朮」が含まれているか、私には分かりませんが、「蒼朮」は温性の性質で「脾」の「湿」を除く作用があります。よって、やや暑がりで身体が乾燥気味の場合や、体に「気」が不足して汗をたくさんかく傾向の場合には使うべき生薬ではありません。しかしながら、子供や高齢の方にはこのタイプの子が多いように思うのです。
ちなみに「茯苓」や「白朮」も穏やかにですが「湿」を除くので、処方全体としても便秘の傾向がある時などに注意が必要と感じます。
もちろん「抑肝散」は「蒼朮」が入っていても良いお薬として使うべき時はたくさんあります。しかし、イライラ傾向があれば、暑がり汗かきで便秘の子にも処方されていることが多いのが実情です。認知症のケースの場合にも然りです。出来れば処方の性質を良く理解して服用を検討することをお勧めします。