自分に顔が似ていることを喜ぶお父さんお母さんは多いと思いますが、コンプレックスがある体型や肌、声などが似てしまうと、「申し訳ないなあ」と感じることもあるかもしれません。もちろん遺伝子はお父さんお母さんから受け継いでいますから、子どもが似て当然。とはいえ、”負”の要素は受け継いで欲しくないなあと考えるのが親心ですよね。
特に、がんなどは遺伝子の変異が関わっていることが知られているため、病気の体質も遺伝するものと考えている方が多いのではないでしょうか。しかし、いわゆる生活習慣病は、その名のとおり、その発症には生活習慣が大きく関係しています。「高血圧家系」とか「糖尿病家系」などはあまり考え過ぎない方が良いように思います。
とは言っても、「うちの家系はがんが多い」「私の親もアレルギー体質だった」など、家族に同じような病気を患う方が多い傾向にあるようにも感じられます。それでも遺伝子の関与が明確に認められていない以上、これらは遺伝と云うよりは、家族の間で同じような生活習慣を共有していたために、同じような病気を発症しやすい、と説明した方が説得力があるように思われます。すなわち、寝る時間が遅い家庭、辛いものが食卓に多い家庭、運動をあまりしない家庭などなど、その家庭の食事や生活の習慣が病気に関係している可能性が高いのではないでしょうか。
漢方の考えにおいては「腎」は先天的な要素であり、ここには遺伝が関係してきます。「腎」は生命力や生殖力と関わっていますので、「腎」が強い場合には、成長が早く、体もしっかりと力強く、病気にもなりずらくなるとも考えられます。しかしながら、病気には後天的な要素も関与します。というより多くは後天的な要因が大きい「脾」や「肺」の病気であり、「肝」「心」も同様です。
すなわち、健康の維持には先天的な「腎」の力が欠かせないものの、後天的な負荷によって病気は発症してしまう、と考えるのです。これは現代医学の見解と似ているのではないでしょうか。
結論として、体質の形成には長年の生活習慣が関わっていることが多く、体質が遺伝することはほとんどないと私は考えます。とはいえ、家族で生活習慣が似ている以上、同じような体質になる可能性は高いため、より注意して生活をするとよいと思います。漢方の知恵を十分生かして、自分の”負”の体質が子どもに似ないよう、気をつけてみて下さいね。