私たちが普段食している赤いニンジン。子どもが苦手な食材の一つのように思いますが、値段も安定していて栄養も豊富な野菜です。ニンジンはメインの料理になることはあまりないように思いますが、彩りになりますし、野菜炒めには必ずと言って良いほど入ってきますよね。また味噌汁やお鍋の具としてはもちろん、輪切りにして焼いて食べても、焼きそば、ラーメンに入れても美味しいですよね。
一方で漢方薬として耳にすることの多い「人参」。同じ名前なので混同しやすいですが、生薬の「人参」は起源の植物がニンジンとは異なります(野菜のニンジンはセリ科、生薬の「人参」はウコギ科)。よって全く別のもの。どちらも根が人の形に似ているために名づけられたものだと思われますが、ちょっとややこしいですよね…ちなみに中国では野菜のニンジンはニンジンと呼ばず、紅蘿蔔と言われます。
さて生薬の「人参」は「オタネニンジン」「朝鮮人参」「高麗人参」とも呼ばれ、さらに精製方法によって「紅参」「ひげ人参」なども知られます。これらはほとんど同じものと考えて差し支えありません。
「人参」は補気薬の代表生薬であり、「気」が不足している時に用いられます。胃腸が弱い方にも使いやすく、体を温め、体力の低下を防ぎます。よって万能薬のようにコマーシャルされますが、本来は「気」が足りない方に用いる生薬であり、どなたにでも合う訳ではありません。昔の有名な漢方の先生の「人参があれば人を殺すことが出来る」との言葉もあり、安易に使うべきではなく、特に高血圧で暑がりの方などは単独での使用は避けた方が良いでしょう。
しかし、基本的には「人参」も一般的な漢方薬と同様、他の生薬と組み合わせることによって、その弊害を抑えることが出来ます。栽培方法や土壌の問題なのか、昔よりも「人参」の力自体が落ちたと言われますが、それでも補気の力は強く、重宝する生薬であることに違いはありません。
さて一方で野菜のニンジンですが、こちらも体に良いありがたい食材です。漢方で規定された性質として、やや体を温め、消化吸収を助けて、「気」や「血」を補うとされます。「血」を補うことで目にも良いのですが、これは医学的に見てカロテン(ビタミンA)が多く含まれていることとも合致します。もちろん生薬の「人参」には力が劣りますが、普段からコツコツ食することで「気血」を補うことは可能です。
同じ名前で少々紛らわしいニンジンと人参ですが、その役割を覚えておくことできっと健康の役に立つはずです。大地の恵みであるニンジン、人参をありがたく頂きましょう。
ニンジンと人参
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