白内障と漢方.jpg白内障は目の水晶体が白濁する病気です。加齢が原因であるケースがほとんどですが、遺伝が関係した先天的なもの、糖尿病なども要因となります。しかしなぜ白濁が起こるかという原因は明確ではなく、医学的には予防は困難とされます。また、白内障を治す薬も無く、原則として手術でしか回復しないという見解が一般的です。
現在は白内障の手術の技術進歩は著しく、比較的容易に行うことが出来ます。よって、我慢して見えにくい不自由な状態で暮らすよりも、手術をしてクッキリとした視界を確保した方が良いという考え方が主流です。視界が悪い状態で生活すると、高齢の方の場合は転倒などの怪我につながる可能性があります。しかし、手術はやはり抵抗があるという方も多いでしょう。生活上で大きな問題がなく、白内障の進行も遅いようであれば、手術にこだわらなくても良いように感じます。その場合において、漢方薬で状況を改善し、進行を食い止めるという方法も一考でしょう。
さて漢方の考え方で白内障を考えると、基本的には五臓の「腎」と「肝」の問題に集約されます。「腎」は生命力や生殖力と関連した”臓”であり、加齢により衰えます。よって、白内障が高齢になると起こりやすいという事実より、白内障の原因は「腎」の衰退に関連していると考えて間違いありません。
一方で「肝」は「目」と関連の深い”臓”です。白内障は目の疾患であり、その治療に「肝」のバランスの崩れを考えることも必然です。
よって「肝」と「腎」のケアを考えてお薬も考慮されます。代表的な漢方薬としては「杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)」が挙げられ、白内障の予防や悪化の防止に多用されています。この「杞菊地黄丸」は「腎」を補う代表的な処方である「六味丸(ろくみがん)」と枸杞子(くこし)、菊花(きくか)という「肝」のケアに使用される生薬が配合されたお薬です。
ただしこのお薬はやや冷やす傾向があり、また多少胃腸にもたれやすいという欠点もあります。その他様々な体質を考慮したうえで服用のお薬を決めることが賢明です。
また「杞菊地黄丸」であっても白内障の濁りを改善することは簡単ではなく、使用は白内障初期に用いて悪化を防いだり、まだ発病する前の予防の目的が中心となります。漢方も早め早めの対策が肝心。「杞菊地黄丸」は若返りの薬としても使えますので、老化防止の意味でも50歳前後からの服用をお勧めします。