字を書くときのみに手が震えてしまう、書痙(しょけい)。事務仕事や文筆家、教師など字を書くことが多い方に見られる病態と言われます。振戦と呼ばれる病気の一種ですが、医学的な発現のメカニズムは分かっていません。
最近は字を書くことが少なくなったとはいえ、現代生活では書類作成などペンを持つことが必ずありますから、仕事や生活上大きな不便を生じてしまう病態であると言えるでしょう。
振戦と同様、緊張や疲労で悪化することが多いようで、逆に飲酒で症状が緩和するとされます。しかし原因が分かっていない以上、医学的に対処が難しいようです。病院では、抗てんかん薬など、筋肉のけいれんを鎮める薬、もしくは精神安定剤など気持ちをリラックスさせる薬が使われることとなるでしょう。
しかしこれらで十分な効果が得られない場合や、特に安定剤を飲み続けることに抵抗がある方などは、漢方薬を試してみてはいかがでしょうか。
書痙の漢方的な原因としては、「肝風内動」と呼ばれる、体の中に風が吹いている状態が考えられます。これは書痙だけでなく、一般的な振戦、ふるえ、けいれんなどと同様ですが、「内風」と呼ばれる体を動かす”邪”が悪さをしていると捉えます。この場合には「平肝熄風(へいかんそくふう)」と言って、風を収める漢方薬を使用します。具体的には「釣藤散(ちょうとうさん)」「抑肝散(よくかんさん)」「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」などが当てはまります。
また、「肝」が自律神経系をコントロールする臓と考えますので、その機能を安定させるために「肝血」を補う薬である「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」などを使うことも考慮します。
とはいえ、書痙と言えども程度に差があり、また体質もそれぞれ。中医学的な体質判断(弁証と呼ばれます)をしっかりと行うことが原則であり、そのうえで服用薬を決めることが大切です。
(参考図書;今日の治療指針(医学書院))
書痙
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