黄体機能不全による不妊と漢方.jpg黄体機能不全の診断基準は
1)高温相の持続が9日以内
2)高低の温度差が0.3℃以内
3)子宮内膜の厚さが8mm以内
4)プロゲステロン10ng/ml未満
とするのが一般的です。
ただし、病院によってはもっと厳しい基準であったり、ゆるい基準であったりします。また、女性のホルモンバランスは非常に変化しやすいため、周期によって全く異なる結果が出ることもありますし、不全の程度も様々です。よって黄体機能不全と診断されても過度に心配する必要がない場合もあり、冷静に対応することが必要です。
ちなみに黄体機能不全とは、排卵後に卵胞から変化した黄体と呼ばれる部分から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の状態が悪いことを指します。この黄体機能不全があると、受精卵が着床し妊娠を継続できる可能性が低くなると言われています。
病院で黄体機能不全と診断されると、高温期に黄体ホルモン製剤やhCGの注射を勧められるでしょう。
黄体機能不全の判断は基礎体温表でもある程度行うことが出来ます。高温相が短い、低温期から高温期への移行が遅い、高温期の体温が不安定などが認められた場合は、黄体機能不全を疑います。
この場合、たとえ病院で黄体機能不全と言われなくとも、上記のような傾向が何周期も認められれば、中医学的にみた黄体機能不全対処法を考えても良いでしょう。
さて中医学では高温期、すなわち黄体期は「陽」の時期と捉えます。よって「陽」の不足が黄体機能不全を導くと考えます。ちなみに「陽」は体を温める要素であり、その力が弱いと、体が冷えたり、むくみを生じたりと言った症状が現れるとされます。
よって「陽」を補うお薬である「参茸補血丸(さんじょうほけつがん)」や「海馬補腎丸(かいばほじんがん)」などを高温期に使用する方法が一般的です。これらは動物性生薬を含んだお薬であるため体を温める力に優れており、黄体ホルモンの補助となるような働きが期待出来ます。またこれらのお薬は「腎」を補い、生命力を高めるため、妊娠への近道ともなるでしょう。
また高温期への上りが悪い場合や、高温期がギザギザで不安定な場合は、「気」の巡りが悪い可能性も考えられます。その際は「逍遥丸(しょうようがん)」などのお薬を選択します。
以上のように黄体機能不全の不妊と言っても、中医学的な原因は異なる場合があり、選択するお薬も様々です。漢方薬を服用を考える場合には、まず漢方薬局などで専門家に体質を判断してもらうことをおススメします。
*参考文献 不妊治療ガイダンス第3版(医学書院)