不妊治療中の方が、もっとも多く使用しているお薬といえばクロミッドでしょう。病院の方針によっても多少異なりますが、不妊で訪れた際にまず最初に処方されるお薬と言っても良いと思います。
クロミッドは古くから使用されている排卵誘発剤です。5%以上の方に卵巣過剰刺激、過敏症、肝障害、0.1から5%未満の方に霧視、食欲不振、頭痛、口渇の副作用があるとされていますが、どちらかというと害の少ないお薬であるとともに、排卵を促す効果は高いために広く使用されてきました。
しかし上記に挙げられていない、もっと頻度の高い副作用が存在します。
1)頸管粘液の量や質の低下(排卵期のオリモノが減り、粘性が低下する)
2)子宮内膜の質や量の低下(生理血が減り、期間が短くなる)
この他にも、黄体化未破裂卵胞を増やすとも言われています。
なお子宮内膜の厚さが超音波の検査で問題ないと言われた場合であっても、その質が悪いと考えられる場合も多く、注意が必要です。
一般的に副作用は服用した人が感じる不快症状なのですが、上記のような副作用は表だって見えにくい作用です。また、開発当初はあまり知られていなかったようで、そのため薬の添付文書には副作用として記載されていません。しかしこれらは妊娠率に大きな影響を与える非常に大きな副作用であり、多くの報告によって指摘されている紛れもない事実です。
そして何といっても驚きなのが、クロミッドの添付文書には「無排卵症以外の不妊症患者には投与しないこと」となっている点です。しかし現実的には、非常に多くの順調に排卵している方が服用しています。
さてクロミッドの副作用を考える時に重要である、その作用機序を整理してみましょう(完全には解明されていないのですが…)。
1)クロミッドが視床下部にある細胞のリセプターに結合
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2)本来(エストロゲンが結合した場合)はこのリセプターからの指令で抑制される、FSHやLHの放出を促すホルモン(Gn-RH)がより多く産生される
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3)FSHやLHの分泌が亢進され、エストロゲンの放出を促す
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4)エストロゲンがある一定量に達するとLHサージを起こし排卵する
少し難しいですね…
クロミッドはエストロゲンとタイプが似ているという点が大きなポイントで、これによりエストロゲンの働きをブロックします。そしてそのエストロゲンの重要な働きこそが「頚管粘液の生成」や「子宮内膜の増殖」なのです。この働きが阻害されてしまうからこそ、クロミッドによる副作用が発生するのです。
そこでようやく本題ですが、このクロミッドの副作用に対してはどのように対処すれば良いのでしょうか。クロミッドが無ければ排卵しない場合や、体外受精の採卵でどうしても使用しなければならないケースもあります。
そのような時に役に立つのが漢方薬。「婦宝当帰膠」や「オリジンP(プラセンタ製剤)」にはエストロゲン作用があることが知られており、クロミッドによる副作用を軽減する働きが期待出来ます。
クロミッドは良好な妊娠率の割には妊娠率が低いと言われています。個人的にはクロミッドは安易に使用することは控えるべきであり、使用しても長くて6か月にすべきと思います。
(参考図書 不妊治療ガイダンス[医学書院]、今日の治療薬[南江堂])
不妊に用いる排卵誘発剤クロミッドの副作用対処
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