低体温と不妊漢方.jpg最近、低体温状態は体にとって良くないと謳っている本や記事を良く目にします。子供の体温が低下していることも危惧されているようですね。確かに何となく体温が低い状態はあまり良くないように感じます。体の活性が落ちそうなイメージがありますよね。
しかし、その医学的・科学的根拠は薄いようです。確かに温度が高く保たれていると、体内の酵素などの働きも良くなります。となれば、代謝活性や免疫力なども体温の低下と共に落ちていくことは当然です。体温が32度近くになると、生命活動が維持できなくなることも知られています。
とはいえ、平熱が35度程度であっても、それが病気に結びつくとか、不妊の原因になるという証明は出来ていません。体温計の誤差もありますし、測定方法に依っても値は大きく変わります。人間は数値が出て、それが基準と外れていると深刻に考えてしまいがちですが、あまり心配し過ぎてもどうかと思います。
さて、不妊の治療をするうえで、まず初めに基礎体温を付け始める方も多いと思いますが、その時に測る正確な基礎体温が、低温期で35度台であれば低体温気味と考えても良いかもしれません。また、高温期の体温が36.5度に届かないケースもやや体温が低い傾向があると考えられます。
逆に低温期が36.3度代で推移し、高温期が36.8度前後となる体温表が理想に近いように感じます。
しかし、これはあくまで数値であり、中医学(中国漢方)で重視するのはやはり自覚症状です。体温がいくら35度台であっても、体に冷えを全く感じなければ特段に心配は要りません。逆に体温が高くても、冷えを強く感じて異常な寒がりであれば、体の中のバランスの崩れがあることは間違いないでしょう。さらに言えば、体温が高すぎる(高温期が37.1度以上で、暑がりのぼせなどの症状がある)時には、逆に注意が必要であり、体温を上げればいいということでもありません。
その上で、低体温で体全体が強く冷え、寒さに著しく弱い場合は「腎陽虚」と考えます。「腎」すなわち体の生命力が弱く、「陽(温める力)」が不足している状態です。この場合には「補陽薬」と呼ばれる、附子や桂皮の入った「八味地黄丸」や、鹿茸などの入った「参茸補血丸」や「参馬補腎丸」と言ったお薬が必要となります。また養生としては、羊肉や牛肉、ネギなどを積極的に食べると良いでしょう。
ちなみに最近流行っている「生姜」も悪くは無いのですが、摂り過ぎは禁物ですし「腎陽虚」は生姜だけでは決して改善はしません。同様にカレーやキムチなども一時的に体を温めることは間違いありませんが、合わない方もいますし、これだけではなかなか低体温の解決にはならないでしょう。
そして、低体温や冷えの原因は様々な要因が絡んでいることもあり、「腎陽虚」体質の対処だけでは解決できない場合もあります。しっかりと体質判断をした上で漢方薬も服用をしましょう。
最後に表題の「体温が低いと不妊になるのか?」という問いに対する答えですが、上記の通り「腎陽虚」などの体質があれば不妊の原因の一つになりますが、数値だけで冷えを感じないような時には、それほど気にしなくても良い、という答えになります。低体温だから寒さを感じないけど生姜をたくさん食べている、というような対処は感心しません。ぜひ漢方の専門家に一度ゆっくりと相談してみて下さいね。