ピックアップ障害不妊と漢方.jpgピックアップ障害は最近よく耳にするようになった言葉です。卵巣からお腹の中の空間にポンと放出された卵子(排卵)は、卵管采と呼ばれる器官に依って卵管内に取り込まれなければなりません。その卵のキャッチのことをピックアップと呼び、一連の機能が上手くいかない状態をピックアップ障害と言います。日本語で捕捉障害とも言われます。
以前より不妊の原因としてピックアップ障害が関与している可能性が示唆されていましたが、最近具体的なデータが集まり始めたこともあり、注目されつつあるようです。ある文献では、原因不明の不妊患者の約半数が、このピックアップ障害が原因であるとした研究も紹介されているほどです。
ただし反論の意見もあり、現在の技術では正確に卵管采の取り込みの可否を判断する方法が無いため、憶測の域を出ません。とはいえ、実際に肉眼で卵管采を観察すると形態的な異常が見られたり、卵管采の細胞を採取して顕微鏡で観察すると損傷があったりと、不妊の方の多くは何かしらの不具合が発見されることが多いようです。
そもそも、卵管采の機能自体が「すごいなあ」と驚嘆するものではないでしょうか。お腹の中に卵子が放出されたのを見つけ、手のようにつかみ取ってしまうのですから…しかも片方の卵管に異常があるような時などは、反対側の卵管采が逆まで動いていってピックアップするケースもあるそうです。女性の体はすごいなあと感心せざるを得ません。
ただそのような”高性能”な器官だからこそ、不具合も起こしやすいとも言えるでしょう。
ピックアップ障害と診断されるケースとしては
●卵管造影で卵管采部分に通りが悪い所見がみつかった
●腹腔鏡などのカメラで実際に卵管采を観察して、異常が確認された
が考えられますが、卵管造影でははっきりとした異常は分からないケースが大半です。
また、ピックアップ障害の原因としては
●クラミジア感染による炎症や癒着
●子宮内膜症に依る炎症や癒着
などが考えられていますが、年齢と共に細胞機能自体の低下も予想されますので、誰にも起こり得る障害であるとも言えるでしょう。
とはいえ、ピックアップ障害が不妊の原因であれば、直接受精卵を子宮に戻す体外受精では妊娠できるはずです。しかし、体外受精の妊娠率は25%程度であることを考えれば、やはりピックアップ障害だけで、不妊の問題を片づけることは出来ないでしょう。
さて、漢方的なピックアップ障害への対処法ですが、基本的には「理気活血」「化痰」を考えるべきと思います。ピックアップ障害の原因になり得る子宮内膜症対策と同様に、巡りを良くして、「気血」の流れをスムーズにすれば、卵管采の動きも回復すると考えます。具体的には「水快宝(すいかいほう)」などの漢方を考慮します。
また、癒着があると疑われる場合には、「痰湿」と呼ばれる体内の不純物の存在を考え、それを取り除くために「温胆湯(うんたんとう)」や「シベリア霊芝」などの漢方薬の服用を検討しても良いでしょう。
とはいえ、漢方的な対処はピックアップ障害だけにとらわれずに、体全体の体質把握をしたうえで適切に行うことが大原則です。必ず漢方の専門家に意見を聞いてから服用をしましょう。
(参考図書;不妊治療ガイドライン第3版 医学書院)