不妊の原因として男性側の因子が50%近くなる、というデータも公表されている現状に比して、その男性不妊の要因に対処する医学的な方法は極めて乏しい状態です。不妊であると、どうしても赤ちゃんを育む女性に目がいきがちですが、男性の役割も非常に大きいと考えられ、その対策はしっかりと行わなければなりません。しかし、男性の意識は総じて低いのが現実でしょう。
男性不妊というと、精子数や運動率、奇形率などが注目され、その数値が独り歩きし、それだけで不妊の定義がされている側面もあります。しかし、これら数値は体調や採取方法、機器の状態に依り非常に変動しやすく、また数値が悪くても妊娠しているケースが多数見受けられるなど、あまりあてにならない面もあることを覚えておかなければなりません。ちなみにWHOや学会等で発表されている基準値も見直しが多く、医学的にも迷っている節があります。
逆を言えば、数値が良くとも安心は出来ません。受精卵の半分は男性のDNA、すなわち精子の情報です。しかしそのDNAを調べることは出来ません。医学的な限界があることを知り、少しでも赤ちゃんが授かる確率を上げるために男性も体を整えることが非常に重要なのです。
ちなみに体外受精や顕微授精の場合も同様であり、精子の状態を良くすることが妊娠の確率を高めることにつながるでしょう。
なお男性はかなりの高齢でも妊娠させる力はあるとされますが、やはり年齢と共にその力は衰えると考えられます。精子は約3ヵ月間で作られるため、女性が生まれた時から卵子の元の細胞を持っているのに比べると、年齢のデメリットは大きくは無いとされます。
しかし、多くの男性は30代後半から40代になると、「精子量の減少」や「射精時の勢いの低下」などを感じているのではないでしょうか。また「インポテンツ」に悩む方も増えてきます。
このように年齢と共に体や精子の状態が衰え、それとともに妊娠させる力も低下することを自覚しなければなりません。その上で、その低下を出来る限り抑えられるように、日頃から養生を行うと良いでしょう。
★疲労をためない
男性は中医学では「陽」に属します。そして「気」は「陽」と同じグル―プ。「気」が足りないと”男性力”が衰えてしまうと考えても良いでしょう。
しかし、もともと男性は活動的で「気」を消耗する生き物です。よって食べ物に依って継続的に「気」を補っていくことが大切となります。ヤマイモなどの根菜類、豆類、お米などを意識して摂ると良いでしょう。
ここで注意すべき点は、男性は”熱しやすい”ということ。日常的に「温める」食材を摂るとあまり良くない可能性があります。やや「冷ます」食材を意識すると良いと思います。
また、朝慌てて朝食を済ます男性も多いと思いますが、朝は消化の良い食事をすべきと考えられています。冷蔵庫で冷やされた野菜ジュースなどはお勧めできません。こういった生活習慣が「気」の消耗につながってしまいます。
★お酒の飲み方に気をつける
お酒を飲む機会が多い男性の方はたくさんいらっしゃると思います。その場合にまず気をつけなければならないのが、冷たいビールや、水割りなどを大量に飲むこと。これらは「湿(余分な水分)」を生み、精子の活動を低下させると考えられます。どうしてもお酒を飲む席を避けられないのであれば、出来る限りお湯割りや熱燗にしましょう。
また、飲酒後に濃いお茶やキュウリ、トマトなどを食べて、水分を排泄させ、体に「湿」を貯めないようにすると良いとされます。
★ストレス対策をする
「気」を体全体に行きわたらせる役割をもつ「肝」は、ストレスがかかるとダメージを受け、その働きが損なわれます。「気」が十分に存在しても、体の隅々まで届かなければ、体の状態は低下し、精子にも影響を与えます。
男性は職場などで少なからずのストレスを受けています。ご自身で強いストレスを実感している方は、趣味の時間を取ったりすることを意識するとともに、「肝」に良いとされる酸味のある食材(酢の物や梅干し、柑橘系果物など)を積極的に摂りましょう。
★性生活の節制をする
無理な性生活をすると、中医学で言う「腎」がダメージを受けるとされます。特に10代や20代で負担をかけてしまった方は、赤ちゃんが授かりにくい傾向があるかもしれません。もちろん赤ちゃんを育むための夫婦生活は適度に必要ですが、無理は禁物であることを覚えておきましょう。
不妊を防ぐ養生(男性編)
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