PMSと不妊漢方.jpgPMS(月経前症候群)で悩んでいる女性は非常に多いとされます。統計資料に依ると、生理のある女性の5-20%にみられる症状とのことです。医学的にPMSを診断する明確な基準は無いとのことですが、生理前が憂鬱である方はPMSであると考えて問題ないのではないでしょうか。
具体的な症状としては、むくみ、胸の張り、便秘、頭痛、イライラ、うつなどが挙げられます。しかし、この中に当てはまるものが無くとも、生理前に不快な症状があり生理が始まると徐々に消失していく場合には、PMSと呼んで差し支えないと思います。
PMSは西洋医学的にはホルモンバランスの乱れが原因であるとされますが、発生理由の詳細は不明です。よって原則として根本的な対策は無く、症状に合わせて薬で対処をしているのが実情です。また、症状は生命に影響を及ぼすものは無いため「生理前だからしょうがない」と割り切ってしまう女性も多いようです。
とはいえ、月に10日このような症状で悩んでいる方は、1年の1/3の時間が辛い時期となっていることになります。これは大変なことであり、解決方法を考えていくべきです。
さてこのPMS症状は不妊との関係も否定できないと私は考えています。その理由は以下の二点です。
1)PMS症状の発生原因はホルモンバランスの乱れである可能性が高く、その場合には当然妊娠も出来にくいと考えられること。
2)漢方的観点からPMS症状は「気滞」体質が要因と思われ、この「気滞」体質に依って不妊が引き起こされる確率は高いこと。
となります。
現実的な例を一つ挙げますが、プロラクチンが高いと胸が張り、PMS様症状を引き起こします。そして高プロラクチンは排卵等に影響することが医学的に分かっています。このようなことから考えても、症状の程度に依って異なるとはいえ、PMSのある方イコール不妊という訳ではないとしても、PMSがある方は不妊になりやすいとは言えるのではないでしょうか。
よって現在は妊娠を考えていない方も将来的なことを考えて、対策を練ってみましょう。もちろん不妊で無い方も、妊娠を望んでいない方も、憂鬱な時間を減らすためにぜひ漢方薬の使用を検討してみて下さいね。
さて前述したように、PMSの漢方的な原因は「気滞」と考えられます。「気滞」とは「気」すなわちエネルギーの停滞であり、様々な症状の原因となります。「気滞」症状の特徴は「張りや痛み」「不安定」であり、まさにPMS症状はこれに当てはまるものばかりです。
よって対策としては「気」の巡りを改善する漢方薬を服用します。PMSの代表的な処方である「加味逍遥散(かみしょうようさん)」を始め、「開気丸(かいきがん)」や「炒り麦芽」などを症状に合わせて使い分けます。
注意点としては、原則として生理前は基礎体温も上がることから分かるように”熱”がこもっているケースがほとんどです。イライラなどはその典型であり、このような時に漢方薬で体を温め過ぎは禁物となります。しっかりと体質の見極めをし、PMSだから「加味逍遥散」や「当帰芍薬散」と安易に決めないようにして下さい。
また養生法としては、酢の物や梅干し、セロリやかんきつ類など、「気」の巡りを改善する食材を多く摂っていくと良いと思います。そして出来る限り体を動かして、ストレス発散を心がけてみましょう。
ちなみに不妊の方は、赤ちゃんがなかなか授からないというストレス、病院通いのストレスから、ほぼ全員が「気滞」体質になっていると思われます。それがまたPMS症状を悪化させてしまう可能性があり、そして妊娠にも影響を及ぼすという、悪循環に陥ってしまいます。ぜひその流れを断ち切るためにも漢方の理論を役立ててみて下さいね。