卵管水腫と不妊漢方.jpg卵管水腫は最近不妊の原因として注目されている病変です。その名の通り、卵管の中に水(分泌液)が貯まった状態であり、その水が物理的に受精卵の移動を邪魔するだけでなく、子宮に流入して受精卵の着床に影響を与えているとされます。よどんだ不要な水は、受精卵を受け止めるために敏感になっている子宮内膜や分割を繰り返している受精卵にとって刺激が強いのでしょう。
このため卵管水腫は、自然妊娠はもとより、体外受精でグレードの高い受精卵が育って移植をした場合にも着床率を下げる要因になっていると考えられています。着床率を1/10下げると言う報告もあるため、明確な診断がつけば対策を取らなければなりません。しかし、水腫は良くなったり悪くなったりを繰り返す場合もありますので、一度の検査結果だけで悲観しすぎる必要はないでしょう。
とはいえ西洋医学的には炎症がひどいと切除以外に手が無いケースもあります。卵管水腫は卵管の病変のもっとも進んだ状態とも言われていますので、超音波で見ることのできる場所以外にも何らかの異常が起きている可能性が考えられます。卵管鏡による卵管内の検査結果を踏まえて対策を考えることが肝要です。
そもそも卵管水腫が起こる原因は良く分かっていません。クラミジアや大腸菌などの感染が一つの要因になることもありますが、抗体陰性でも卵管水腫は起こることがあります。そして卵管水腫を吸引や手術などで治療しても再発することが多いとされます。さらに片方の卵管で水腫が見つかった場合には、もう一つの卵管にも異変が起きているケースが多々あると言われます。
よって再発防止や、もう一方の卵管のケアのために漢方薬を試してみるのも一考です。大きな目で自分の体を見つめ直し、卵管水腫が出来た体質を根本から治し、妊娠しやすい体に近づけていきましょう。
さて、卵管水腫の漢方的要因としては、まず”湿”を考えます。”湿”は余分な水のことで、この存在が卵管水腫の原因の一つであることに疑いはないでしょう。ちなみに卵管水腫の特徴として水っぽいオリモノが多くなるという症状がありますが、これも体内の”湿”の存在を示しています。
そして卵管水腫には必ず炎症が存在しており、これは漢方的には”熱”と捉えます。”湿”と”熱”はセットで存在することが多く、見逃してはいけない症状と言えるでしょう。
よって、”湿”を取り除く作用を持つ「温胆湯(うんたんとう)」や「五行草(ごぎょうそう)」が卵管水腫のケアとして第一に挙げらる漢方薬になりますが、場合によっては免疫調整の働きを持つ「シベリア霊芝」などが候補となって来るケースもあるでしょう。さらには「爽月宝(そうげつほう)」や「水快宝(すいかいほう)」などの卵管閉塞に対して用いられるような”気血”を動かす漢方薬の併用も考えられます。
最近は技術が進み、卵管鏡を用いた卵管形成術が実績を挙げているそうです。確かに物理的な問題は手術で治療した方が良い場合もあります。しかし、その体の状態を作り出したのは、ご自身の生活習慣です。一時的な解決法では無く、長い目で見て子宮や卵巣、卵管の状態を高める工夫をして頂くといいですね。