不妊治療人工授精.jpg不妊治療でタイミング法のあと、次のステップとして行われる治療が人工授精(AIH)です。
人工授精は精子を濃縮処理などして、不純物を取り除いた後に子宮に注入します。これにクロミッドなどの排卵誘発やスプレキュアまたはhcgによる排卵日調整を組み合わせて行うこともあります。一般的に保険が適用となる治療法で、「人工」とは名がつきますので物々しいですが、短時間で終わる比較的簡易な治療法です。
人工授精の1回あたりの成功率は10%以下と言われており、症例あたり(一人の女性が何度か人工授精を行って、妊娠する確率)では20%程度とされます。この数字はなかなか授からない方が分母となっているため、一概に良し悪しは言えませんが、自然妊娠とそれほど大きな違いはないとも言われています。
ここで、私が考える人工授精のメリット・デメリットを述べてみます。
★人工授精のメリット-1 性交障害がある場合
これは言わずもがなですが、特に男性のインポテンツなどの場合には有用です。
★人工授精のメリット-2 抗精子抗体価が高い場合
精子の敵となる抗体の数値の高い方は、その抗体の影響をあまり受けずに、頸管内に精子を送り込むことによって妊娠の可能性を高めることが出来ます。
★人工授精のメリット-3 頸管粘液の問題がある場合
頸管粘液が少ない、質が悪いなどの問題がある際には、その部分をバイパスして直接精子を送り込むことのできる人工授精は有用となるでしょう。
★人工授精のメリット-4 精子の状態が悪い場合
精子を事前に処理をすることによって、質が良く濃い状態の精子を注入することが可能となります。あまりにも元の状態が悪い場合には意味がありませんが、「ちょっと悪い」程度であれば結果が出る可能性もあります。
ちなみに上記のようなメリットが生かされる条件としてヒューナーテスト(性交後試験)の結果が問題となります。ヒューナーテストに問題が無ければ、理論上人工授精の意味はない、と考えても差し支えないでしょう。
☆人工授精のデメリット-1 大切な夫婦関係がなくなる
赤ちゃんを授かるためにもっとも大切なことは、夫婦の愛情だと思います。致し方ないとは言っても、人工受精は機械的であり、やはり寂しいのは否めません。
☆人工授精のデメリット-2 妊娠率があまり上がらない
前述したとおりですが、人工授精の妊娠率は自然妊娠よりは多少高くなったとしても、大きな違いは無いという考え方が一般的です。
☆人工授精のデメリット-3 病院で治療を受けるというストレス
いくら簡単な治療と言っても、やはり病院での治療にストレスはつきものです。これが逆に妊娠にマイナスになるという考えもあるでしょう。
あとは年齢や今までの経緯を考えて、人工授精を行うかどうか、決めていくことになると思います。
さて最後に、漢方的に考えて、人工授精を行う時に何か薬を服用するべきかということですが、自然妊娠やタイミングの時と同様、あまり考え過ぎずに普段通りで良いかと思います。あえて一つ挙げれば、ストレスがかかりやすいので、リラックス効果がある「気滞」に対するお薬(逍遥丸など)を服用しても良いかもしれません。
とはいえ人工授精成功のポイントは結局のところ、良い排卵が出来るか、卵の質は良いか、子宮内膜の状態は良いか、精子の状態はどうか、という点になります。これらを改善する可能性がある漢方薬の服用はプラスであることは間違いありません。もちろん病院の薬との併用もまず問題ありませんので、ご自身の体質に合った漢方薬を適切に選択し、ぜひ試してみて下さいね。