不妊の体外受精の治療にはいくつかのステップがあります。まず卵胞が順調に育っているか、次に採卵して良い卵が取れるかどうか、そして受精して順調に分割していくか、さらに受精卵を戻して無事に着床するかどうか、最終的には出産がゴールという形になると思います。
体外受精に臨むに当たり、多くの方が出産までは簡単ではないことをご存知ですが、受精卵を戻すところまでは何とか進むのではないかと考えるように思います。しかし、それよりもかなり前の段階である採卵時に空胞という結果が起こると、非常にショックを感じてしまって当然ではないでしょうか。数日前から卵胞が何個も順調に育っているように見えていて、いざ採卵日となり、痛い思いをして採卵の手技を受けたのに、結果が空胞であったとなると、現実をなかなか受け入れられません。
しかし相談を受けていると空胞であったというケースはかなり多く見受けられます。加齢により空胞の割合が増えることは知られていますが、排卵誘発方法の問題や、いわゆる遺残卵胞が原因であったりと、不妊治療が発生の要因であると指摘されることもあるようです。
とはいえはっきりとした原因は分かりません。そして、毎周期、空胞ということは少なく、周期によってという側面もあるようです。あまり「なぜだろう」と考え過ぎない方が良いかもしれません。
さて漢方的に考えて、空胞はどのようにとらえれば良いのでしょうか。やはり、年齢との関係も指摘されている通り、卵子の質的な問題が大きいと私は考えています。中医学で云う「腎」の力不足に依り、卵子の発育環境が整わないまま卵巣が刺激され、空胞となってしまうのではないでしょうか。
ここでいう「腎」は生殖力、生命力と関係した”臓”であり、年齢とともにどうしても衰えてしまいますし、若くとも体質的に「腎」が弱い方もいらっしゃいます。しかし、この「腎」を補う「補腎薬」と呼ばれる漢方薬の服用により、卵巣の環境は良くなっていくと考えられます。
なお「補腎薬」にはたくさんの種類があります。また空胞の原因が「腎」以外の問題である可能性も考えられます。なんでも「補腎薬」を服用すれば空胞が防げるというわけではありませんので、漢方的な体質判断のもと適切なお薬を選択しましょう。
空胞は非常にショックな出来事ですが、その対策のために漢方薬の服用を検討していくことによって、空胞の問題だけでなく、卵の質を上げ、妊娠の可能性を高めることにもつながると思われます。最終的なゴールは赤ちゃんが生まれることです。ぜひ前向きに次の治療を考えていきましょうね。
空胞を防ぐために
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