他人にはなかなか伝わらない、つらい痒み。痒くなる部分は様々ですが、一般的にはアトピー性皮膚炎に代表される炎症を伴う痒みが多く、手足が中心となります。しかし、肌は問題は無くキレイだけけれども、肛門が痒くなるケースが多々あります。皮膚と言うより粘膜に近いかもしれませんが、これも辛い症状の一つです。肛門の疾患については、どうしても恥ずかしさで病院に行きづらく、慢性的な痒みに苦しんでいる方も多いことでしょう。

肛門の痒みについては、医学的には、大腸からの分泌物が原因となり、皮膚粘膜のただれが痒みを誘発すると考えられます。さらにはカンジダなどの菌感染が加わって悪化することも多いとされます。肛門の粘膜は非常にデリケートであるため、トイレットペーパーでの刺激や、下着のこすれでも、傷がついて痒みの要因となってくることもあります。その他、痔がある場合や、糖尿病などの疾患が原因で痒みが生じることもあります。
決して清潔にしていないから痒みが生じるという訳ではなく、逆にトイレットペーパーでの拭き過ぎやウォッシュレットの長時間使用で肛門が傷つくこともあるとされます。

肛門の痒みがある場合、まずは病院での検査が出来れば一番です。痒みがひどく、明らかに炎症があるケースでは、ステロイド軟膏が有効となります。しかし、病院に行くほどでない場合や、どうしても病院には行きたくない場合は、漢方での対応も一考です。また、肛門の痒みは繰り返しやすいものです。痒みの根本原因を取り除かないと再発が懸念されますので、再発防止を目指しての漢方薬服用も検討されても良いのではないでしょうか。

さて中医学では肛門は「二陰」の一つであり、「後陰」と呼ばれます。「後陰」は、「腎」との関係があるとされますので、慢性的に続く肛門の痒みや便の漏れなどがある場合には、「腎」のケアの必要性があると考えられます。
しかし、痒みは「風邪(ふうじゃ)」が関係しているとされ、原則として肛門の痒みには、この「風邪」を除去する漢方薬を考えます。また痒みは炎症が原因となっていることが大半であり、「熱邪」の存在もあると考えて、「熱」を冷ます薬も検討されます。
以上より、具体的には「瀉火利湿顆粒(しゃかりしつかりゅう)」「消風散(しょうふうさん)」などが適することが多くなります。場合によっては痔があってもなくても、痔対策で用いられる漢方薬「槐角丸(かいかくがん)」が合うケースもあります。
そして、慢性的な疾患として「腎」のケアを考えるのであれば「星火亀鹿仙(せいかきろくせん)」などが候補となります。

ちなみに肛門の痒みがある場合は、辛いものは良くありません。とうがらしなどの他、ニンニクやショウガ、わさびなども控えめにしましょう。そしてお酒も悪化の要因となりやすいため、飲み過ぎに注意したいところです。さらには、便秘下痢も肛門を刺激してしまいますので、状況によっては胃腸の漢方薬でのケアも大切となります。

いずれにしても前述したように肛門の痒みの原因は様々であり、中医学で考えた場合も同じことが言えます。原因によって、適する漢方薬はもちろん、養生法も変わってきます。肛門の痒みでお困りの方は、まずは漢方の専門家にご相談ください。