私たちの身の回りには病原菌があふれています。ではなぜ病気にならないのかと言えば、免疫という防御の力があるためです。よって免疫力が十分に構築されていない子供が風邪を引くのは当たり前であり、極端にいえば大人の体になっていく上で避けることのできない道とも言えます。様々な病原体の感染を経験して、それに負けないように抗体が出来、だんだんと強い体になっていきます。
しかし現実的には子供が風邪を引くと、親は仕事や生活に影響が出てしまいます。また数日で良くなればまだしも、数週間も続いたりすると子供の体力が弱ってきてしまいます。菌やウイルスに感染することは致し方ないとしても、極力症状が出ないようにとどめるための対策は行うべきでしょう。
なお体力がある子供は感染しても症状がほとんど出ません。例えば昨年新型インフルエンザが流行した時に、全く症状が出ていないにも関わらず、新型インフルエンザに感染した証拠の抗体が陽性であった子供がたくさんいた、という調査結果が発表されました。この例でもわかる通り、まずは風邪を引かない(ウイルス等に感染しても症状が出ない)体作りが必要であることは言うまでもありません。
とはいえ、実際には多少の症状が出ることがほとんどでしょう。今回は風邪の初期に現れることが多い、代表的な症状の対処方法を列記していきます。
●喉が痛いと訴える場合(1,2歳の子は食事を嫌がることも)
風邪の初期に最も起こりやすい症状と言えるでしょう。この時にどれだけしっかりと対処できるかによって、その後の経過が大きく変わってきます。可能な限り早く漢方薬を飲ませてみて下さい。
喉が痛い場合には、必ず「熱邪」が存在します。よって、「熱」を追い払う「天津感冒片(てんしんかんぼうへん)」又は「涼解楽(りょうかいらく)」を服用しましょう。これらを飲めない子供には「板藍茶(ばんらんちゃ)」や「板藍のど飴」をお勧めします。
●鼻水が出る場合
これも子供に多い症状です。たらたらとした水のような鼻水の場合には、基本的には「寒邪」の存在を示唆しています。温めるお薬である「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」を服用します。
ただし朝方の一時的な鼻水のような感じがあれば「衛益顆粒(えいえきかりゅう)」で、体の免疫力を高めた方が良い場合もあります。
●咳が出る場合
初期の咳は、咽の痛みを合わせて訴えることが多く、その場合には「天津感冒片」が合うでしょう。しかしこじれた場合や、痰が多い場合などは、その状態に合わせてお薬を選択する必要があり、やや難しい判断が必要となります。あえて単純な対処方法を挙げれば、空咳であれば「潤肺糖漿(じゅんぱいとうしょう)」などの潤すお薬、痰が絡んでいれば「五行草(ごぎょうそう)」などの水分を除去するお薬が合うでしょう。
●熱が出た場合
子供は寝て起きたら39度になっていた、というケースも多々あります。汗の有無などに依って漢方薬も選択すべきですが、原則として冷ますお薬であり「天津感冒片」や「板藍茶」を服用させます。初期であれば熱がすぐに下がることも多いですが、高熱が続いた場合にはもちろん病院に行きましょう。
●下痢や嘔吐をする場合
胃腸系が未発達な子供は、風邪で嘔吐や下痢も起こしやすいものです。落ち着いて「五行草」や「勝湿顆粒」などを服用します。ただし、出すものは出した方がいい場合もありますので、様子を見ながら与えて下さい。
以上主な症状を述べてきましたが、このような対処がすぐに出来れば、小児科に罹る機会は非常に少なくなると思います。子供が風邪を引いてしまうと心配になるのは親として当たり前ですが、出来る限り早めに漢方で対処することが出来れば、悪化することはまずありません。ぜひ知識として覚えておいて下さいね。
子供の風邪の初期対応
公開日 : / 更新日 :
891PV
タグ : 風邪 初期 子供 漢方 漢方薬