慢性膵炎は腹部や背中の痛みを主症状とする疾患で、年々その患者数は増加しているとされます。男性はアルコールが原因であることが多いのに対し、女性は特発性(原因不明)のことが多いという特徴があります。食事後に強い痛みが生じる疾患であるため、食事が楽しくなくなり、生活の質に影響を及ぼしそれがまたストレスになってしまいます。
慢性膵炎は良くなったり悪くなったりを繰り返すという特徴もあります。西洋医学では、根本治療ではなく対症療法しか手がありません。よって発作時には痛み止めを飲み、その他はフオイパンなどのタンパク分解酵素阻害薬などで炎症の軽減に努めます。
軽症であればこれらのお薬で十分の場合もありますが、慢性膵炎は基本的に長期にわたってケアが必要な病気です。禁酒や、炭酸飲料、香辛料、高脂肪食の制限など、生活面での対策も重要となってきます。
しかしこれらの対策はストレスに結びつくことも多いものです。そして漢方の考え方では、慢性膵炎はストレスと関係が深いとされているため、結果的に病気がなかなか良くならないということにもつながりかねません。そのため、せっかく我慢して頑張っているのに身体も心もすっきりしない状態が続くことになってしまいます。
よって漢方では「肝」すなわち自律神経の問題も考え合わせて対処することが一般的です。もちろん膵臓は消化器系統の器官であり、症状も胃腸と深く関係していますので、「脾(消化器関係)」に対する考慮も併せてする必要があります。
そこで用いられるのが「大柴胡湯(だいさいことう)」や「開気丸(かいきがん)」といったお薬です。これらは「肝」の「気」の巡りを整える作用がメインですが、「脾」のことも考えて作られています。「大柴胡湯」は、漢方の本場中国では急性膵炎の際にも使用される漢方薬です。
さらには「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」や「参令白朮散(しんれいびゃくじゅつさん)」などの「脾」に重点を置いたお薬を併用すべき場合もあります。基本的には炎症性疾患であるために、温める漢方薬は慎重に使う必要があるでしょう。
いずれにせよ、慢性膵炎といっても程度には大きな差があります。詳しい症状をしっかりと把握してもらうためにも漢方薬局等で相談のうえ、服用するお薬は選択してください。
なお食事やお酒に関しては一般的には病院の指示に従うべきですが、あまりにも厳しい制限はストレスとなり、病気の改善にとって必ずしも良いとは言い切れないと私は考えます。
中医学で見た場合には、温性の食べ物は控えめにするべきとされ、逆に「気」の巡りを改善する香りのよい食材(柑橘類やシソ、セロリなど)は積極的に摂るべきです。そして音楽や趣味などで出来る限りストレスの少ない生活を目指してみて下さいね。
慢性膵炎と漢方
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