自律神経失調症と漢方.jpg自律神経失調症は正式な病名ではありませんが、病院で診断されたり、テレビなどで取り上げられるなどして一般的な名称になってきています。理由の分からない体の様々な不快感があれば自律神経失調症と判断されてしまうケースも多く、定義はあいまいです。
そもそも自律神経とは、自分の意志で動かすことの出来ない神経をいいます。例えば心臓は無意識で動いていますし、胃腸も私たちが「動け」と命令して食べ物を消化している訳ではありません。
この自律神経は私たちが健康に体を維持していくために、無意識下で働いてくれている非常に重要な神経なのです。
しかしこの自律神経が正常に働かなくなると、心臓は動悸をうち、胃腸は吐き気を催したりと、普段とは異なる指令をだして機能失調が起こってしまいます。自律神経は非常に敏感な側面があり、微妙なバランスの崩れが様々な症状を引き起こすとされます。この異常は、生命の維持を難しくするようなことは多くありませんが、生活の質を著しく低下させるために、当人にとっては大きな問題となります。
ただし自律神経の失調は、誰しも大なり小なり抱えている問題であり、あまりに深刻に考え過ぎる必要はないと思います。シーソーがふらふらしていたり、大きく傾いたりしている状態ですが、少しの工夫をしてバランスを整えてあげればシーソーは安定します。そのために漢方薬は大きな助けになると思いますよ。
さて自律神経失調症と一口に言っても、その症状は多岐にわたります。よってその症状やその方の体質に合わせてお薬を考えていく必要があります。
しかし基本的に自律神経失調症の場合は「気滞」といわれる「気=エネルギー」の巡りの悪い体質があると考えてほぼ間違いありません。「気滞」体質は体と心を不安定化させてしまいますが、自律神経失調症はまさにその”不安定”状態と言えるでしょう。良くなったり悪くなったりするのは「気滞」体質の特徴の一つなのです。
よって「気滞」体質に用いる「理気(りき)」作用を有する漢方薬が自律神経失調症にはよく用いられます。「加味逍遥散(かみしょうようさん)」や「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」がその代表処方です。
その他にも「心神不安」「肝陽上亢」など、自律神経失調症の方を詳しく見ていけば様々な体質が絡んでいることが多いものです。そしてその体質に対してピッタリの漢方薬を飲むことができれば、多くの場合、非常に速やかに症状が消失します。
もちろん時間をかけて、体質をゆっくり整える必要があるケースも多いですが、いずれにせよ様々な場面で漢方薬は役に立つと思いますよ。