尿の回数の問題は、当事者にならないとなかなか分からないかもしれませんが、非常に厄介な悩みとなります。ひどい方は1時間の会議や授業さえもたなかったり、夜起きるまでに5回も6回もトイレに立つ方もいらっしゃいます。これでは生活の質の低下を招き、睡眠不足につながることは間違いありませんよね。ちなみに頻尿は年配者の方に多いため、介護している方がそのたびに起こされるという事態も生じます。
またそれが嫌だから寝る前の水分を極度に減らしたりする方が多いのですが、これが健康を害す原因となることも考えられます。よって頻尿で生命の危機にさらされることはありませんが、病症として大きな問題の一つであることは間違いないところでしょう。
医学的な頻尿の定義としては昼間8回、夜間3回以上の場合を指します。原因は膀胱炎、前立腺疾患、神経因性膀胱、心因性などが考えられています。しかしこの中で病院の治療が有効と思われるのは膀胱炎ぐらい。その膀胱炎も慢性化しやすく、根本的な解決は難しいのが現状でしょう。
また心因性の場合には精神安定剤などが処方されることもあるようですが、その効果も限定的と言わざるを得ないのではないでしょうか。
ちなみに神経因性とは脳血管障害などに依ることもありますが、加齢に伴う現象とされます。実際にはこの原因での頻尿が最も多く厄介なのですが、バップフォーという薬があるくらいでこれを飲めばまず収まるという西洋薬がないのが現状です。
そもそも排尿は人間の正常な生理現象ですから、それを無理に止めることは逆に体に害をきたす可能性もあるはずです。そして尿は血圧とも関係が深く、その点も考えながら治療を行わなければなりません。
一方で漢方薬であれば体に無理なく頻尿対策が出来ます。頻尿を起こしている体質を見極めた上で、そのバランス改善のための漢方薬を服用するのです。すぐに回数が劇的に減ることは少ないかもしれませんが、効果が出ている人は多く、試してみる価値はあるでしょう。
頻尿に用いる漢方薬は何種類かあり、体質によって合う処方が変わりますので、同じ頻尿であっても「この薬が効く!」とは言えません。ただ加齢による頻尿の場合は「腎(漢方で云う生命力)」に対しての漢方を使用する必要があることはほぼ間違いなく、「補腎薬」と呼ばれるタイプの処方を選択します。しかし「補腎薬」もたくさんの種類があります。冷えがある方には「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」が合うケースが多いでしょうし、逆に熱っぽさがある方には「瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)」などが適します。ちなみに前立腺炎による頻尿、女性に多い疲れに依る頻尿にも「腎」に対するお薬が使える場合が多いでしょう。
その他にも「猪苓湯(ちょれいとう)」や「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」や「五行草(ごぎょうそう)」なども頻尿に対して使うことの多いお薬です。これらはどちらかと言えば短期的な対処を目指して使用されますが、上記の「補腎薬」と併せて使った方が良いケースも考えられます。
本当に煩わしい頻尿ですから、「年だからしょうがない」「体質だから…」などとあきらめずにぜひ一度漢方薬を試してみて下さい。きっと尿の問題だけでなく、体のバランスの矯正によって体に様々な良い面が出てくると思いますよ!
頻尿と漢方
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