前立腺は男性に特有の器官です。以前に「慢性前立腺炎と漢方」のコラムで触れましたので、前立腺についての詳しい話は省きますが、薬が届きにくい(効きにくい)器官とされています。
前立腺炎は炎症疾患で痛みを伴う場合が多いのですが、前立腺肥大については尿に関してのトラブルが主な症状となります。前立腺は尿道や膀胱のすぐ側に位置しますので、その部分を圧迫してしまうのです。よって、頻尿と、キレや出が悪いなどの排尿困難が主な症状となります。
前立腺肥大の原因は不明ですが男性ホルモンが関与しているとされ、80歳代の男性では80%以上の方にその診断が下るとされます。一種の老化現象ですから、病院に依っては「年ですからね」と済まされることも多いかもしれません。
確かにそれほどひどい症状が無ければ、むやみやたらにお薬を服用するよりも上手く前立腺肥大と付き合っていった方がいいと思います。しかし漢方薬であれば体に負担をかけることなく、症状をある程度落ち着かせることは可能です。我慢しすぎることなく、上手に漢方の理論を使っていくといいですね。
ちなみに前立腺の状態を測るマーカーとしてPSAが知られています。PSAは基本的に前立腺がんを発見するための指標ですが、前立腺肥大の他、各種の前立腺疾患で値が上昇することがあります。この値を気にし過ぎてストレスとなったり、検査に追われることになってしまうことは、大きな目で見て健康につながるとは思えません。もちろん医師の判断を仰ぐべきですが、10ng/ml以下の場合には気にし過ぎないようにしましょう。
なお、根本的な治療として手術が考えられ、症状がひどい場合には検討しても良いと感じます。欧米ではかなりポピュラーな手術とのことです。その他、レーザーなど入院も必要ない治療法もあるため、主治医の先生と相談してみましょう。
さて漢方的に考える前立腺肥大ですが、老化現象という観点からも「腎」の問題として考えます。「腎」とは生命力を担う臓であり、その「腎」が機能低下することに依って尿トラブルが起きると考えます。病院でも出されている漢方の「八味地黄丸」は、その「腎」の「陽」を補う漢方薬です。その他「参馬補腎丸」や「至宝三鞭丸」などの「補腎陽」のお薬には作用が強い動物性生薬が入っていますので、さらに良い効き目を示す場合もあります。しかしながら、暑がりであったり体に”熱”がこもっている方は合わないお薬であることを覚えておきましょう。
また水分過剰の問題(水湿)の場合もあり、その場合には「猪苓湯」などを考えていくと良いと思います。さらには血行不良も前立腺疾患とは関係がありますから、「桂枝茯苓丸」や「冠元顆粒」の服用も考慮に入れると良いのではないでしょうか。
その他、食用蟻製剤「イーパオ」も「補腎」や血行、「水湿」の問題にも対処可能なため、適した処方と考えます。
しかしながら一口に前立腺肥大といっても、症状の軽重、発病してからの期間、ご年齢などから、適するお薬は変わります。しっかりと体質判断を行うことを第一にお考えください。
(参考資料;今日の治療指針(医学書院))
前立腺肥大と漢方
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