男性にも更年期が存在することを知らない方が多いようですね。医師でさえ認識不足の方がいらっしゃるようであり残念なことです。
ただ私の手元にある医学関連の本にも「男性更年期」について述べられているものはありません。LOH症候群と呼ばれ、学会でも発表され始めているようですが、医学的には、発症頻度が高く、緊急性の高い疾病とはまだまだ認められていないのでしょう。
そもそも男性更年期障害はどこの科で担当する疾患であるか明確でありません。基本的には内科かと思いますが、全く知識の無い先生も多いはず。泌尿器科の方が専門性の高い先生と巡り合える可能性は高いかもしれません。性欲の問題がもっとも気になるようであれば泌尿器科で間違いありませんが、疲労感などが主であれば迷ってしまいますよね。
さてまずは男性更年期障害に起こり得る症状を列記してみましょう。いわゆる不定愁訴なので、非常にたくさんの症状がありますが、主なものを取り上げてみます。
★倦怠感
★うつ、イライラ、不安
★不眠
★頭痛、肩こり
★頻尿、残尿感
★性欲減退
その他、動悸、息切れめまい、物忘れ、耳鳴り、脱毛、吐き気、下痢など、あらゆる症状が起きる可能性があります。
これらの症状の主な原因は、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の減少であるとされます。しかし女性のように数年で10分の1まで減少するのと違い、男性は10年近くかけて半分になる程度。よって女性ほど目立った症状が出ない方が多いとされます。
とはいえ、男性ホルモンの値の変化だけでは説明できないケースも多く、様々な要因が重なって男性更年期症状が発生するようです。
この男性更年期の治療については、ひどい場合にはホルモン治療を検討し、そうでない場合にはうつ病の薬などが処方されるのが現状です。しかしながらなかなか改善は難しいことが多いようです。
漢方の考えでは、男性は8の倍数で体が変化するとされ、64歳が一つの境目となります。その前後についてはもっとも更年期症状が起きやすい年代と考えて良いでしょう。そして西洋医学的原因が不明確でも、困っている症状に合わせて薬を選択することが出来るのが、漢方の良い点です。女性更年期と同様、男性更年期にも漢方がもってこいなのです。病院に行くほどでもなくとも、何となく気分が優れない状態は、とてももったいない時間です。ぜひ漢方の服用を検討しましょう。
具体的には、中医学で云う「腎」の問題を優先して考えます。「腎」とは生殖力・生命力のことであり、その減衰はいわゆる老化であり、根本的な原因となっていることが多いでしょう。よって「腎」を補う漢方である「補腎薬」を中心に服用を検討します。「八味地黄丸(はちみじおうがん)」「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」「知柏地黄丸(ちばくじおうがん)」などが候補として挙がることが多いでしょう。
しかしながら、「腎」だけでなく「肝(自律神経系)」や「脾(胃腸系)」の問題が絡んで症状が起きていることも少なくありません。その場合には、「腎」も考慮しつつも、症状に合わせて様々な漢方薬の中からもっとも体質に合ったお薬を選択して服用を検討すると良いでしょう。
すなわち、男性更年期=この漢方、という考えは間違いであり、症状・体質に則して服用する漢方薬を決めていくべきです。
男性更年期は男性の人生の一部です。下手に抗わず、穏やかに過ごすために漢方薬を上手に活用して下さいね。
(参考;横山博美らによる男性更年期問診票)
男性更年期と漢方
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