パニック障害と漢方.jpgパニック障害は、最近店頭での相談で良く耳にするようになった病名です。神経系の病気であり、科学が発展した現在のストレス社会が引き起こしている現代病といっても良いでしょう。どなたにでも起こる可能性がありますが、生命に影響を与える病気ではないことを理解しておくことが大事かと思います。
パニック障害の主な症状とは、突然の動悸、呼吸困難、めまい、ふるえ、恐怖感、不安感、発汗などとされます。突如として起こるケースもあれば、電車などの人混みが要因となるケースも多いでしょう。最初は何がなんだか分からずに救急を利用する患者さんが多いようです。
また一度発作が起こると、次の発作への恐怖感・不安感が強くなってしまう傾向があります。それが身体への負担を生み、悪循環となってしまう場合もあるでしょう。
病院では抗不安薬であるワイパックスなどを発作時に服用するように指示されると思います。そして中期的には抗うつ薬のパキシルなどの処方で、神経症状を安定させます。
しかしこれらのお薬は離脱症状が起こったり、副作用が気になったりと、服用をためらう方も多いかと思います。もちろん、あまりに症状がひどい場合にはひとまず落ち着かせるために薬を服用しても良いのかもしれません。とはいえ、安易に頼り過ぎても本当の改善にはならない可能性もあります。その点を考え、漢方薬の服用を検討する方が増えているのでしょう。
さて中医学でパニック障害はどのように捉えるのでしょうか。一種の現代病であるため、古代からの書物には明確な治療原則はありません。どんな病気もそうですが、パニック障害イコールこの処方という定義は出来ないのです。しかしながら動悸や不安感などの症状が引き起こされる理由は中医学で説明がつきます。
そこにはある種の体質が関与していることは疑いも無く、その体質改善こそがパニック障害の予防につながると考えられます。
その体質ですが、いくつかの可能性が考えられます。
1)気滞体質
「気」すなわちエネルギーの停滞に依って生じた「痰」が「心」の機能を阻害し、動悸や不安感を起こすと考えます。パニック障害の発作時だけでなく普段から胸やお腹が張ったり、気持ちが悪いなどの症状があれば、この体質である可能性が高いとされます。ちなみに「気滞」の発生原因の大半はストレスです。
逍遥丸(しょうようがん)」「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」などを使用します。
2)気虚・血虚体質
「気」や「血」が足りないために「心」が養えず、機能不全に陥るために、動悸をはじめ各種症状を発生してしまうと考えます。この場合には必ず疲労感を伴いますし、めまいや立ちくらみが起こることが多いでしょう。
帰脾湯(きひとう)」や「麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)」を検討します。
3)陰虚体質
「陰」すなわち身体の潤い成分が不足して、「心」の「血」に影響を及ぼし、動悸や不安感が生じるとされます。不眠や手足のほてり、耳鳴りなどを伴うことも多いでしょう。
「陰」を補うお薬である「天王補心丹(てんのうほしんたん)」「瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)」などを検討します。
その他にも考えられ得る体質が多々あり、自分がどの体質であるかを見極めることが大切になります。また、短期的には「心」の詰まりを取り除く即効性が期待できる「牛黄清心丸(ごおうせいしんがん)」が良い場合もあります。
しかしいずれにしても「心」に不具合があることは間違いないところであり、そのケアをすることがパニック障害の漢方的対処法の基本となるのです。
パニック障害の恐ろしさは、その発作を恐れて生活の質が低下してしまうことにあるかと思います。気兼ねなく生活が出来るように、漢方による根本的体質改善を図っていきましょう。