骨粗鬆症と漢方.jpg骨粗鬆症は比較的最近注目されるようになった疾患ではないでしょうか。お年寄りの女性が骨折しやすい傾向にあることは昔から分かっていたと思われますが、検査技術の発展により骨の内部の把握が容易になったため、対策を立てやすくなりました。そして高齢者が増えたために、骨粗鬆症の患者数が自然と増えている事実もあると思われます。
話は全く変わりますが、この病気の名前は非常に発音しにくいですよね。何とかならないのでしょうか…
さて、骨粗鬆症は有名な疾患なので、多くの方がご存じとは思いますが、骨の内部組織がスカスカになる病気です。そして、そのスカスカが原因で骨折しやすくなってしまうことが問題となります。骨折は高齢者にとって、体調の悪化を招く大きな要因になるためです。
骨粗鬆症は女性がなりやすい病気で、80歳以上の女性の実に50%以上が病気を持っているとされます。一方で男性は20%程度。この違いは骨からのカルシウムの分離を抑制している女性ホルモンが閉経に伴い急激に少なくなっていくことに依ります。ちなみにもともと女性ホルモンの少ない男性に骨粗鬆症が少ない理由は、男性ホルモンは一定程度女性ホルモンに変化するということ、そして男性はもともとの骨の造りが丈夫という二点が考えられるそうです。
骨粗鬆症の西洋医学的な治療は主にビタミンDが使われ、重い状態の場合には女性ホルモン(エストロゲン)の投与が行われます。その他にも様々な薬が開発されていますが、「これを服用すればすぐに治る」という薬は存在しません。よって、検査で状況を確認しつつ、長い目で見て対策を立てていくことが必要でしょう。そして、西洋医学での治療が上手くいかない場合や、長期での薬の使用に不安がある場合などは漢方の服用を検討をしてはいかがでしょうか。
さて漢方の理論で考えた場合に、骨粗鬆症と切っても切れない関係にあるのが、五臓の一つ「腎」です。「腎」は生殖力や生命力と関係する臓ですが、この「腎」は加齢と共に衰えるとされます。そして「腎は骨を主る(つかさどる)」とされ、「腎」の衰えは骨に影響すると定義されます。よって、漢方で骨粗鬆症の治療や予防を考える場合には、「腎」のケアをすることが必須となります。
具体的には「参馬補腎丸(じんばほじんがん)」「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」といった代表的な補腎薬や、「イーパオ」「プラセンタ」などの補腎の力を持った商品を組み合わせると骨粗鬆症の予防や対策につながります。
また見落としがちですが、ダイエットで骨粗鬆症が起こりやすいことなどから分かる通り、栄養不足が「骨」の状態を悪化させます。すなわち消化吸収能力が悪い=胃腸が弱い方も骨粗鬆症になりやすいと考えられます。
漢方で云うならば「脾」の力不足がある方が当てはまります。特に60歳代以下の方や男性で骨粗鬆症があると言われた方は、「脾」が弱っていないか検討が必要でしょう。
そして最後に女性ホルモンの活性に役立つ「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」も有効となるタイプの方もいらっしゃると思います。いずれにしても体質判断を専門家に仰ぎ、服用する漢方薬を決めていきましょう。
なお食事に関してはビタミンD摂取の有効性が言われています。卵や魚、海藻類などに多いとされ、この中で海藻類は「腎」を強化する食材とされていますので、漢方の観点からもおススメです。
ちなみにカルシウム摂取は意味がないとされます(カルシウムの不足が骨粗鬆症の原因では無く、カルシウムが骨から失われることが原因のため)。よって無理に牛乳を飲んだりヨーグルトを食べている方は「脾」にも悪影響なのでぜひ止めて下さい。また炭酸飲料やコーヒーの飲み過ぎもカルシウムの排泄を促すとされ、お勧めできません。
骨粗鬆症は命に直接かかわることの無い病気のようですが、骨折→寝たきり→肺炎などの病気とつながりますし、介護の問題等、生活の質に大きな影響を与えます。ぜひ漢方を使って積極的に予防をしていきましょう。